花、咲く
□六輪目
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アリス学園に入学し一週間ほど過ぎたその日、綾乃の元に一通の手紙が届いた。
手紙をくれるような知り合いがこの世界にいたかしらと思い差出人を見ると、そこには見慣れた両親の名前が綴られており、思わず手にしていた手紙を落としてしまった。
六、テガミ
さすがにその手紙を食堂で読む気にもなれず、タカハシさんに具合が悪いので先生に連絡してほしいと伝え部屋にこもった。
『綾乃へ
あなたに会えると知ったとき、喜びで涙が止まりませんでした』
その手紙には会話がこそ無かったものの私に会えて嬉しかったということが書かれていた。
その文字ですら私の見知ったものであるという事実に眩暈がする。
『あなたの姿が消えてからというもの、一日だってあなたのことを考えなかったことはありませんでした』
私が両親を探そうと思ったのはただ単に私を生んでくれた感謝を伝えたかったから。
一度その顔を見れば十分だと思った。
『あなたが連れてきた子を私達の養子にというお話、先生から聞きました。
大事な子なのでしょう。私達でよければその件お受けいたします』
けれど、伝わってくる優しさまで父さんと母さんと同じものを感じてしまった私は。
あの二人を両親としてみてしまうのではないか。
そう考えると怖くてたまらなくて、行き先も決めずにアリスを使った。