蒼の民の血と共に

□U.なまえ
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「確かに一緒にいるのは危険のようね。でも私、コーラルに行くつもりなの」

今度は打って変わって真剣な声音で言う。

「何故今なのだ。もっと待てはしないのか」
「ええ。私もウォルがコーラルに帰ってからいくつもりだったの。でも、今ここにこうしている。これってきっと、神様みたいな何かが私に今しかないって言っているのだと思うの」

そう言って、どこか遠くを眺める。
その目にはきっと、うっそうと生茂る森など目に映っていないのだろう。
ただ故郷の、そして先日までいた地の乾いた砂が吹き荒んでいるに違いない。
ウォルはその様子を見て説得を諦める。
こんな表情を見せた彼女は嫌に頑固なのだ。
意見をかえさせるには三日三晩懇々と危険性を説きつづけるぐらいの根性が必要だ。
さすがに今はそんなことをしている暇もないのでもう一人の少女への説得を行うことにする。

結果としてはこちらも失敗に終わったのだが、男は思わぬ味方を手に入れた。
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