とりかえばや
□No.1
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彼が教室に戻ると教室は8割方埋まっており、皆思い思いに会話をしている。
席についたとたん友人の一人が満面の笑みを浮かべながら近寄ってきた。
「なあ巧、聞いたか?昨日ツナが告白したんだってよ」
「へー、思ったよりも早かったね。で、首尾は?」
内心しまったと思いながら返事を返す。
もうそんな時期だったのか。
誰になどと分かりきったことなど聞かない。
「それがさ、叫んで逃げ出されたらしい」
「は?」
思わず間抜けな返事をしてしまう。
いや、別に知っていたけどさ。
あの年中ぽやぽやした京子ちゃんに叫んで逃げ出されるってどれだけだよ。
表面上は反応の薄い巧を特に気にした様子もなく友人はなおも言葉を重ねる。
「なんでもパンツ一丁で崖の上から飛び降りてきて告白したらしいからな」
誰だよそいつは。間違ってもツナじゃねえ。
周りの連中を見渡してみると大体のやつらがこの話題を口にしていた。
なんでも剣道部の人間が大声で触れ回っているらしい。
だれか疑問に思えよこのツナの「奇行」に対して。
適当に相づちを打ちつ話をぼんやり聞いていると突然わっと教室が沸いた。
どうやらツナが登校してきたらしい。
教室の様子を見てツナは慌てて帰ろうとするがその前に剣道部に捕まり剣道場へと連行されてしまった。
それを見るためにクラスのほとんどがついて行く。
もちろん先ほどから楽しそうに巧に対して話しかけていた友人も。
「ん?巧、行かないのか」
なぜか動こうとしない俺をいぶかしんで友人が声をかけてくる。
「ちょっと小便」
うわとか早く来いよとか言う声に軽く返事をする。