とりかえばや
□No.5
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「今日は家庭科実習で作ったおにぎりを男子にくれてやるーっ」
ワッとわきあがる教室の男子達の声。
正直に言おう。
必死すぎて引く。
この学校のおにぎり実習は何故か恒例となっている。
そして、完成したおにぎりを男子にあげるのも恒例だ。
並中生にとって一年のおにぎり実習はバレンタインにも勝る勝負イベントなのだ。
しかも非常に結果が目に見えやすい。
今日の勝者は獄寺。圧倒的。
まあ、ちらほらおこぼれに預かっているやつもいるが。
「あ、あの「食べたら死ぬぞ!」
ん?今誰かに話しかけられたような気もするが。
それよりも、暴走ツナがやばい。
いつのまにか毒々しい色へと変化しているおにぎりをパクリ。
ごくりと飲み込み次の獲物へと目を走らせている。
ギラリと光った気がするその目が捉えていたのは、俺の隣にいる福山の持っているおにぎり。
きれいに整えられているそれは明らかに誰かにあげるためのもの。
いくら自分で制御できないからって、これを奪うのは少し許せない。
ということで、向かってくるツナに向かって全力で拳を振りかぶる。
ゴツンと鈍い音がしてツナはばったりとその場に倒れ付す。
……避けると思ってたんで手加減しなかったんだが。
近くにいた獄寺などは危険物を取り出しそうだったので慌ててツナを担いで保健室へと向かうことにする。
何故か山元と獄寺もついてきたが。
「あ、ごめん福山。ちょっとクラスの収拾つけといて」
「ちょ・・・・・・」
呆然とするクラスメイト達を置いて移動する。
……言っとくが、押し付けたのはお前らなんだからな。