とりかえばや

□No.7
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夏休みも終盤に近づいたその日、俺はいとこと買い物に出かけた。
行き先は黒曜ショッピングセンター。
来週の俺の兄の誕生日プレゼントを買いに行こうという話になったのだ。
ああ、ちなみに。
倉沢巧のいとこの名を椎名香澄という。
病気がちで普段学校に行かない上に過保護な俺の兄弟のおかげで『深窓の姫君』などと呼ばれているらしい。
本人も笑っていた。
こいつが猫をかぶっているのもその原因の一つだが。
それにしても……。

「もうちょっと顔が隠れる格好とかないのか?あるいは今よりボーイッシュなのとか」
「やだなあ、お母さんがそんなの買ってくるわけないじゃん」
「ですよねー」

確かにその格好は非常に似合っている。
女の子の魅力を最大限に引き出した素晴らしいチョイスといえよう。
だがしかし、忘れてはいけないのだが俺の顔のつくりは非常に女の子らしい。
そして、横で明るく笑っているこいつの顔とほぼ同じものなのだ。
夏休み明けの学校を思って俺は深いため息をついた。
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