とりかえばや

□No.7
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その日彼らは残り少ない夏休みを有意義に過ごそうと、少し遠出をして黒曜ショッピングセンターまで来ていた。
当然ながら全員男であり、あわよくば、女の子を誘えないかななどと淡い希望を抱いている輩である。
目を皿のようにして可愛い女の子を捜していた彼らが、その二人を見つけてしまったのはある意味必然だったかもしれない。

最初に気がついたのは、彼のクラスメイトだった。
ふわりと、ワンピースのすそが翻るのを視界の端に感じ、すぐさま顔を確認し、硬直した。
友人達も彼の反応を訝しげに思い、視線をたどり、同じく硬直した。
やがて、その原因となった少女が視界から消え去るまで彼らは同じ場所に呆然と佇んでいた。

「な、なあ」
「その先は言うな」
「他人の空似に決まっている。と言うかそうであってくれ」

そうだよな。今の女の子の顔が委員長のものだったなんて。
気のせいに違いない。
見間違いに違いない。
彼らはそう自分達の心に強く刻み付けてそっとその場を去るのだった。
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