花、咲く
□一輪目
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おっかしいな。なんか間違ったかな。
花乃子を腕に抱きかかえながら一人首をかしげる。
最近この力の扱いにもなれてきたし学園の中、そうでなくともその近くに出て来れるはずだったのに。
辺りを見渡してみてもここはどう考えても森。
幸いにも人が近くにいたので保護者と思しき人に声をかけてみるもなぜか全員固まってしまって動かない。
「あの、どうかしましたか?」
その言葉でようやく硬直が解けたこの場所で唯一の大人。
「いや〜、僕は父親じゃなくて学校の先生なんだ。君はいつからそこに?」
「来たのはついさっきですけど、学校とは全寮制の能力者のための学校のことですか?」
「アリス学園のこと?面白い言い方するね」
「名前は知りませんがおそらくそうです。私たちは入学志望者です。といってもどちらも戸籍が存在しませんのでその辺りのことも含めてこの学園の最高責任者の方とお話がしたいのですがよろしいでしょうか?」
ノンブレスで言い切った私に目を白黒させながらこちらを見てくる子供たち。一人の大人は言葉を濁す。
「ぜひともそうしたいんだけど、いろいろ忙しい人でね」
「要するに会えない、と」
黒髪の女の子から容赦ないツッコミが入る。
あー、なんかこうほのぼのとした空気がいいね。なごむわ。
今の今まで殺伐としたところにいただけになおさら。