花、咲く
□八輪目
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教室は未だにざわめきに包まれていた。
その中で沈痛な面持ちをして座っている乃木君とそれを慰めている正田さんの姿を見つけた。
「正田さん少し頼みたいことがあるんだけど」
「あら、白河さん。珍しい」
「花乃子、少しの間見ていてくれないかしら」
「花乃子ちゃんってあの子のこと?」
正田さんの指差す先には乃木君の抱えている子供、つまりはよーちゃんに嬉しそうにかまっている花乃子の姿が。
そういえばさっき「よーちゃんだー」と言って走り出したけど。
フフフ、花乃子の何なのかしらあの子。
「けど私たち今から棗君のお見舞いに行くのよ」
「ええ、それを知っていてお願いするの。佐々木先生って人のところに連れて行ってくれない?頼まれていたんだけど急に用事が入っちゃって」
「ねーねー、用事って何?」
私は今まで正田さんと会話をしていたはずなのだけどいつからここにいたの心読み君。
あら?そういえば名前…。
「結構最初から。名前?フフフフ」
ああごめんなさい。聞いてはいけないことだったようね。
そして、気がつくといつのまにか周囲が取り囲まれています。
「そうね。私のアリスはだいぶ安定しているから大体制御できているのだけど、たまに強制的に発動しちゃうの」
「ええ、それって制御アイテムとかつけんでええの?」
「まあ、本当にめったにないし周囲に害を及ぼすわけでもないしね」
それでも念の為皆には離れてもらう。
話をしているうちに限界が来たようだ。
「それじゃあ、花乃子のこと頼むわね」
「ええ、任せて」
「私も手伝うわ」
手伝いを申し出た蛍ちゃんの目にお土産とはっきり書いてあった。
……余裕があったらがんばろう。
「いってきます」
そう言うと私の姿は教室から掻き消えた。
瞬間移動を見慣れているここの生徒達は普通にそれを見送った。