共同企画:一人遊び
□婚前交渉
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兄の帰りが遅いと、それだけで落ち着かない。
誰と一緒にいるのか気になって、いてもたってもいられない。
「母さん、兄さんは?」
「そろそろ帰って来るわよ。子供じゃないんだから、あなたがそんなにヤキモキしてどうするの」
ぴしゃりと一蹴されて、サスケは何も言い返せなくなる。
母の言うとおりだ。
「それにサスケ、あんまり兄さんて呼んじゃダメよ」
「分かってるよ」
兄は、外では姉ということになっている。
生まれつき不治の病を患い、一族の跡目を継ぐ重荷から解放させるために、男であるということを伏せて育てられた。
それだけなら何も女のふりをさせる必要はないが、うちはにあってこれだけの才覚に恵まれながら長男が当主の座を継がないのは名誉なことではない。
忍術・幻術に優れたくノ一、ということに表向きはなっている。
不思議なことにそれほど不自由はない。
華奢で端正な容姿をしているし、性格も大人しくて優しい。
女と言われて違和感は全くない。
それに……
『姉』が兄である証拠も、もちろんある。
左胸が疼く。
サスケはため息をついて、イタチの部屋の襖を開けた。
自分の部屋のように落ち着く、大好きな兄の匂い。
今誰と一緒にいるか、サスケもよく分かっていた。
兄はもうすぐ結婚する。
いくら体が弱いからと言って、年頃の娘がいつまでも嫁にも行かず親元にいるのは自然なことではない。
しかもうちはの本家、世間体というものがある。
イタチは嫁入りという名目で家を追われるのだ。
シスイが信用できる男であるということはサスケもよく知っている。
イタチ同様、子供の頃から実の弟のように可愛がってもらったし、フガクやミコトも認める温和で誠実な人柄。
家族以外で、イタチの内情を知っている唯一の存在。
兄を安心して任せられるのはこの人しかいないと思ってきた。
イタチがいつも使っている籐の寝椅子に横になってみる。
「兄さん…」
眼を閉じて、口の中で小さく唱える。
シスイさんと、もう……したのか……?
続きは胸の中で呟いた。
左胸以上に下半身が鈍く疼く。
寝椅子に染み込んだ甘い香りを吸い込んで下腹部に手をあてがう。
服の中へ滑り込ませると、情に滾るそれを握って解放した。
「…っ……」
慣れた手つきで構ってやると、サスケの手の中でそれはあっという間に隆起する。
敏感になった弱点を擦り上げて、先端はすぐに露にまみれた。
脳裏に浮かぶイタチのしなやかな肌、髪の香り、やわらかい唇…
次第に手の動きを早めて、狂おしい一瞬を目指す。
サスケが極楽へ上り詰める頃、玄関の引き戸の開く音がした。
ただいま、おかえりと、兄と母のやり取りが遠く聞こえる。
サスケはガバリと体を起して、慌てて衣服の乱れを直した。
今部屋を飛び出すのは逆に怪しい。
開き直って出迎えることに決めると、襖が静かに空いた。