Nightmare NARUTO 2
□涙のしずく
1ページ/6ページ
時間にルーズなのはいつものことだけれど
さすがに真冬に外で待たされるのはつらい。
何度か駅ビルの中に駆け込んで体を温めたが
そうしている間にサソリが来てしまうような気がして
結局また寒風の中、ロータリーまで出てきてしまったサクラは
手袋の上から息を吹きかけた。
自分はいつも待たせるくせに
待たされるのが嫌いだなんてわがままにもほどがある。
心の中で毒づきながら
ふとロータリーの対岸を見ると
人目を引く赤いRX-8がロータリー入り口近くに止まった。
ほっとして駆け寄ろうとすると
助手席から毛皮のコートを着た女の人が降り立って
運転席のサソリに軽く会釈をしたあと
駅の階段の方に向かっている。
ブーツを履いているのにひどく華奢な脚だ。
その場で立ち尽くしていると
赤のRX-8がいつの間にかサクラの目の前まで来ていた。
助手席のドアを開けると
ついさっきまで乗っていた人の残り香が強く香って足がすくんだ。
「何してる、さっさと乗れ。」
言われて慌てて乗り込んだけれど
今まで他の人が座っていた席はひどく居心地が悪い。
あの女の人、誰?
と聞いたところでまともに返事をしてもらえるわけもなく
自分の子供っぽさを露呈するだけの気がして
喉元まででかかった言葉を飲み込んだ。
毛糸の手袋も
校章の入ったカバンに下がっているマスコットも
スカートの下の素足も
何もかもが子供の象徴で
あの人とは正反対。
精一杯背伸びをしてつけてみたグロスも
大人の色香漂うあの人に比べたら他愛なく映っているだろう。