BL NARUTO

□物思う秋
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木の葉の里、という名前にふさわしく、
色とりどりの紅葉が里を覆った。

一年で一番美しい季節だ。


里が一望できる屋根に登ると、
真っ青な空と紅葉のコントラストにしばし目を奪われてしまった。

胸いっぱいに、秋の清涼な空気を吸い込むと
胸の奥にしまいこんである気持ちが急に頭をもたげてきた。

アイツにこの景色を見せてやりたい。
あの夏の日以来、逢えない日が続いているが元気だろうか。

逢いてぇ・・・・

周囲に誰もいないのを幸い
小さな声で言葉にしてみると
喉の奥が痛くなった。

こんな女々しい姿、ぜってぇ誰にもみせらんねぇ。
ぐしぐしと涙をぬぐっていると

「・・・へぇ、お前もおセンチになること、あるんだぁ」

耳元で急に声がした。

「カ・・・カカシせんせぇ!急に現れるなんて卑怯だぞっ!」

くってかかるナルトのそばに、
よっこいせ、などとジジくさい掛け声をかけながら並んだ銀髪の上忍。

ナルトのバツの悪さなど気にかけぬ風に
里の景色を眺めながら

秋はさびしさが身にしみるよな。

独り言なのかナルトに言っているのかわからぬ声音で言って
例の愛読書を顔に載せて
横になってしまった。

涙の件について何も聞かれないので、少しほっとした。

「カカシ先生も、さびしいって思うことあんの?」

「そりゃあ、お前より随分長く生きてるからネェ」

「ふぅ〜ん・・・」

さびしいと思うのは
きっと誰か逢いたくても逢えない人がいるから、なんだろうか。

自分のことを考えると
きっとそうに違いない。


でもそんなことを聞いたら
逆にこっちが質問されるに決まってるし。

というわけで、中途半端に黙り込んだナルトに、

「・・・・お前、ホントに口数減ったよね。」

「そうかな?」

「うん。いつもならここで質問攻めにされるハズだもの。」

「・・・・・・。」

「ホラホラ、また黙っちゃってるし。」

ま、あれだ、お前も大人になったってことかな。

そういうと、口笛でも吹きたそうな顔で
愛読書を広げた。
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