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□修学旅行のススメ
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俺は頬杖をついたまま、そのプリントを見つめた。
退屈、というより摩訶不思議な記号を並べられて理解できない最後の授業(別名:英語)が終わって、配られたそのプリントは俺のクラスでも何より花咲く話の種となった。
そのプリントのタイトルを声に出して呼んだ。
「修学旅行?」
もうそんな季節だっけか。
俺はテンションが上がるわけでも下がるわけでもなく、適当に目を通していた。
さっきの間抜けなその声に俺の前の席のクラスメイトAとさっきまでAと話していたBが振り返った。
「何だよ、その反応。赤也、楽しみじゃないのか?」
「修学旅行なんて、学校生活の一大イベントだろ!」
「へえ〜・・・興味ねえな、俺」
俺は素っ気無く返す。
すると、信じられないとでも言うかのような驚いた顔がこっちを向いた。
行事と楽しいことや面白いことは大好きだが、イマイチ気分がのらない。
だって、それより、練習がきつくてもテニスやってた方が楽しいし。
それに。
「大体、修学旅行って何処行くんだよ?どうせ、京都とか奈良?」
俺がそう聞くと、Aがため息をつく。
「そんなのも知らねえの?立海は大体、修学旅行は選択すんだよ」
「選択?」
「そうそう、いくつかの場所の中で好きなとこ選べんの」
そういえば、先輩達もそんなこと言ってたような。
俺は前に先輩達に修学旅行の話をしてもらったときのことを思い出した。
確か、幸村部長と真田副部長がうざいくらいベッタリしてたって柳先輩が言ってて、ブン先輩がお菓子をたくさん貰って嬉しかったらしい。
そんでもって、仁王先輩と柳生先輩は修学旅行中入れ替わってて、真田副部長に旅行中に叱られたって言ってた。
柳先輩はそういえば、去年、美味しいお土産を買ってきてくれたのを覚えてる。
ジャッカル先輩はブン先輩のお守で疲れたってばててたっけ。
そう思い返すと、先輩達の修学旅行中、凄く寂しい気分で部活をしていた記憶が・・・。
すると、俺は名前を呼ばれてハッと我にかえった。
「赤也、聞いてる?」
「あ、悪ィ・・・なんだっけ?」
「ったく・・・だから、お前はどこにすんの?」
「え?・・・俺?」
俺はプリントに目を落とした。
北海道・東京・大阪・愛知・京都・奈良・広島・長崎・沖縄。
なんというか、ありがちな選択肢ばっかりだな、なんて。
「やっぱ、北海道とか?」
「いや、沖縄だろ?」
「京都も良いな!で、赤也は?」
「・・・・・・東京」
ぽつり、と言った。
すると、AとBが目を瞠った。
「は?」
「東京なんて、休みさえあればいつでも行けるだろ?」
「り、理由は?」
考え直せよ、とでも言う瞳が俺の方を向いた。
俺はそれでも、面倒くさそうに。
「ん。適当」
キーンコーンカーンコーン。
タイミング良くチャイムが鳴った。