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□ヘタレとキス
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ひょい、とクラスの扉から顔をのぞかせる。
すると、ポケットに片手を入れ、壁に寄りかかり、片耳のピアスをいじる目標を確認。
相変わらず、だるそうやな。
苦笑いを浮かべるはずの俺の顔は頬の筋肉がゆるんで、だらしもない顔をしとるんやて、自分でも分かった。
あかんあかん。
こないな顔しよったら、光にキモイ言われてまうわ。
俺は両頬を軽く叩き、顔を引き締める。
それから、いつものように笑みを浮かべて・・・。

「ひーかーるーちゃ・・・っ!?」

目の前に広がった光景に思わず俺は固まってもうた。
別にそれは何気ない光景のはずなのに。
親しげに肩を組む光のクラスメイトと、それに嫌がる気配ないが不機嫌な様子の光。
なんやろ、これ。
ああ、めっちゃモヤモヤする・・・。













【ヘタレとキス】












「・・・てことがあってんけど・・・・」
「へえ、良かったやないか。あいつにもそれなりに仲ええ友達の一人や二人おって」
「せやけど、なんか・・・て、白石、お前、聞いとるんか?」

俺は頬杖をついて、片手で携帯をいじる幼馴染み兼親友(多分)に聞いてみた。
相変わらず視線は携帯に釘付けではあるが、白石はただ、おん、と答えた。
いやいや、ほんまに聞いとるんか、と若干疑ってまうわ。
ま、ええわ。

「・・・そんでな、」
「おん」
「光、あないやからあんまり友達おらへんやん」
「おん」
「せ、せやから、俺だけが肩組んだりとか、頭撫でたりとか、さ、触ってたりしてんとちゃうんかな、とか思っとってん」
「おん」
「だから、なんか俺以外も光に触りよるとか・・・その、」
「おん」
「白石・・・やっぱり聞いてへんやろ」
「おん」

いや、そこは、聞いとる、て答えろや。
人が勇気だして相談しとるっちゅーに。

「・・・とにかく、俺が言いたいのはやな、」
「財前のクラスメイトより財前とスキンシップをはかりたいっちゅーことやろ?」
「・・・」

なんや、しっかり聞いとったんかいな。
ま、そういうこっちゃ、と言えば、白石はふうん、と冷たい反応をする。
ほんまにコイツは俺の悩みを聞く気あるんやろか?
ここまでくると、流石の俺も堪忍袋の緒が切れるっちゅー話や!
すると、白石は携帯をいじくる手をとめ、はじめてこっちを向いた。

「それやったら簡単な話やん」
「え・・・・ほんまか!?」

僅かな期待に俺は胸を膨らませる。
白石はにっこり、と微笑んだ。

「チューすればええねん」
「・・・へ?」

自分でも相当間の抜けた声がでたと思った。
それなのに、白石はにっこりしたまま続けた。

「恋人同士なんやったらチューくらい普通やないか。せやったら、財前ともスキンシップとれるし、謙也の悩みも円満解決、おめでとさんで・・・」
「ち、ちょい待ち!」
「ん?なんや?」
「ち、ちちちちチューって、き、キスのことやんな?」
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