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□ヘタレと従兄弟
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たまに、謙也さんは付き合う相手を間違ってしもうたんやないか、と思うときがある。



「あ、もしもし、侑士?」

「・・・・」



とりあえず、恋人の前で他の奴と電話とかありえへんやろ。













【ヘタレと従兄弟】












それは部活の終わったとある日の部室。
白石部長が用事で先に帰ったせいで、俺は白石部長の代わりにオサムちゃんに部誌を届けに行った帰り。
窓から見れば、出て行った時と同じように部室の真ん中に置いてある長いすに座っているその人を見つける。
そのまま部室に入れば、大好きな声。
しかし、その声の呼ぶ名前は俺とちゃうくて。

「そんなん甘いわ、侑士」

・・・・まだ、やっとんのか。
俺は思わずため息をついた。
それでも謙也さんと一緒に帰りたいと思う俺は健気に謙也さんが自分に気付くのを待つ。
しかし、電話してる謙也さんは気付くことはない。
わあ、ありえへんわ。
めっちゃムカつく。
俺はとりあえず、わざと謙也さんの前を通って自分のロッカーの前に行く。
・・・・別にロッカーに用はない。
横目で気付かれないように謙也さんの様子を窺う。

「美脚言うんやったらこっちの方が絶対上手や」

・・・スルーか?
俺のこと、スルーするんか?
しかも、恋人が素通りしたのに、少しも視線をこっちに向けんとかどないやねん。
しかも、何の話しとるん。
美脚?
アンタら、変態か。
いや、どうせまた下らんこと話てるんやろな、とは思ってたんや。
俺はとりあえず、自分のロッカーを開く。

「別に色っぽいホクロとかいらへんねん。ちょっとした、う、上目遣いとかで甘えてこられんのがええんや!」

・・・どないしよ。
ほんま、この人殴ってええですか?
健全男子たる者、そういうのに興味があるんは百歩譲って許したるわ。
しかし、俺がいる前でそんな話するんか?
悪かったな、可愛ない恋人でッ!
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