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□ヘタレと初恋
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男が女に惚れる、
これは世の鉄則。
更に言えば、極普通。
むしろ、
当たり前。
それなのに、
今まで一般の健全な男子として育ってきた四天宝寺中二年テニス部所属忍足謙也がこの世で初めて恋してしもうたんは・・・
一つ年下の後輩、
しかも、
そいつは男やったっちゅーだけの話や。
【ヘタレと初恋】
桜舞い散るこの季節。
新しい後輩もぎょーさん入ってきて、今年もテニス部は安泰やな、言うてる白石新部長を横に、俺も華やかな気分やった。
元々年下に懐かれやすい俺はものの数日で後輩に懐かれ、気付けば謙也くん言われて親しまれとった。
・・・くん付けしとる時点でなめられとるて?
いや、それはちゃうんやで?
確かに早生まれの俺はあんまりこの学年と年は変わらへんけど、きっとこのかわええ後輩たちに限ってそんなことはあらへんねん!
いや、そうと俺は信じたる!
で、そんな中、後輩に囲まれて幸せ気分を堪能しとったんやけど、俺は気付いた。
ポツン、と離れて球拾いしとるんが一人。
こいつが財前光。
まわりと一緒の一年やっちゅーのに、髪はワックスで固めとるわ、ピアスをつけとるわ、何や不良っぽいなー、とか思っとてん。
少しつり目がかったとことか。
それで、どうにかこうにかして、まずは接触してみよう思てんけど、なかなか近寄り難い。
そんなことを思っていた数日後。
いきなりチャンスが訪れたんや。
いや、その日は生憎の雨の日でな、俺は放課後の放送しとって部活遅れて行きよってん。
きっとそれが良かったんや。
たまたま財前がボール運びよって、ボールのかごごとひっくり返してしもてん。
それを俺が拾うの手伝うてあげてん。
いや、今でもはっきりと思い出せるわ。