裏。

□僕の恋人は橙の猫・前半
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切原赤也、中学二年生。
その日を境に俺の人生は180度変わることとなった。


昨日、天気は雨。
その日はいつもと変わらず、ただ部活が中止になっただけだった。
でも、いつもと違うことがただ一つ。
土砂降りの中、猫を拾った。
綺麗な橙色のその猫は雨の中、ただじっとその場に座り込み動く気配がなかった。

「そこ、濡れるよ」

て、通じるわけないか。
俺は自分でつっこみをいれて、その場から立ち去ろうとした。
すると、猫の泣き声。
俺は振り返る。
ただ俺の方をじっと見つめる視線。
だから、声をかけてやっただけ。
雨がやんだら、外へかえせば良いと思っただけ。

「あのさ・・・俺の家、来る?」

それだけで終わりのはず、だったのに。
















【僕の恋人は橙の猫】












その日、雨がやむことはなかった。
だから、とりあえずその猫の濡れた身体を拭いてやった。
不思議とそいつはただ俺のされるがままって感じで、人なれしている。
どっかの飼い猫かと思ったけど、首輪はついていないし、手並みの手入れも全然。
少しやせている(ように見える)から、きっと飼われていたわけではないのだろう。
とりあえず、その日は俺と同じ布団で寝せてやった。
俺に擦り寄ってきて、顔をぺろぺろと舐められるとくすぐったい。
名前、ないのかな。
野生だから、ないに決まってる。
俺はそんなことを考えながら、眠りについた。
丁度、明日は休みだ。
昼間でたっぷり寝よう。
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