BOOK6
□late
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「宏太って馬鹿だよね。ツンツンして、素直になれなくって、それでたまに自己嫌悪して。
肝心な事言えないと、いつか後悔するよ?」
そう言って、宏太の前髪にそっと触れて掻き分ければ、予想外に下がった眉と目尻と目があった。
泣きそう。
そう思って、宏太の泣き顔なんてもう何年も見てない事を思い出した。
「……うん、そうだな。もう後悔してる、いま。ごめんな。」
好きだ、優姫。
少し掠れた小さな声でそう紡いだ宏太は、切なげにあたしを見つめて、そのままそっと俯いた。
「…うん。で、それですっきりした?本音は?まだ我慢してるんでしょ。」
「…言ったところで、」
「いいから。」
くしゃ、と頭を撫でると、宏太は眉を下げたまま、あたしの手に触れた。
「……彼氏、と…わ、別れて…、おれと、付き合って……、」
本当に、蚊の鳴くような声でそう小さく紡いだ宏太は、そのまま俯いてしまった。
「宏太。」
すっかり覇気がなくなって、小さく縮こまる宏太の両手に手を添えれば、宏太はゆるゆると顔を上げて。
「…言ってみただけだから。本気にすんなよ。」