KRK 's BSK
□芽生
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「…何かあったの?」
「あー、さっきの試合でな、また紫原の悪い癖が出て、黒子と喧嘩になったんだよ。」
アオミーの言葉に、またか、と頭を抱える。
むっくんが努力とか、そういう類が大嫌いなのは知ってる。つまり、黒ちゃんとは全く対極で。
あの二人は、普段は仲悪くないんだけど、バスケ関連になるとどうしても意見が合わずに、度々こうやって揉める事がある。
「黒ちゃん、大丈夫?」
「中原さん。大丈夫です。ありがとうございます。」
「むっくんに何言われたか知らないけど、気にしちゃダメだよ?あたしは、黒ちゃんの努力してる姿好きだよ。それに、ちゃんと成果も出てるからね。」
そういうと、黒ちゃんは一瞬目をぱちぱちさせてから、ふわりと微笑んだ。
「ありがとうございます。いつも中原さんの言葉には救われてばっかりですね。」
「いやいやそんな…「優姫ダメーーーっ!テツ君とそんなに近づかないでーーー!」…さつき。」
光の速さで飛んできたさつきが黒ちゃんにぎゅっと抱き着くのを見て、思わず苦笑が漏れた。
いつもの光景。黒ちゃん、さつきの胸に押し潰されてるし。
「苦しいです、桃井さん。」
「あたしもテツ君がカッコよすぎて苦しいー。」
「はいはい、さつきあんまりやると黒ちゃん窒息しちゃうからその辺でね?」
「うー…はーい。」
黒ちゃんに救いの手を差し伸べたところで、1on1をしてる黄瀬っちとアオミーを横目に、ベンチで左手のテーピングを直しているミドリンのところへ向かった。
ぽすん、と隣に座ると、ミドリンの視線があたしに向けられる。
「中原。」
「相変わらず綺麗にテーピングしてるんだね。」
「当たり前なのだよ。オレはいつでも人事を尽くしているのだから。」
「うん、ミドリンはいつも真面目で偉いよね。今日も調子良かったしね。最後の3Pシュートが一番綺麗だった。」
「ふん、そんな事わかりきっている。何故なら、今日はおは朝占いで蟹座が1位だったのだよ。それに、ラッキーアイテムの赤いストラップも持っている。」
カチャリ、と眼鏡を押し上げる姿が照れ隠しって知ってるから、思わず噴き出すと、訝しげな視線を送られた。
「何がおかしいのだよ。」
「何でもない何でもない!あ、ミドリン、むっくんどこにいるか知ってる?」
「…紫原なら、黒子と喧嘩して部室に行ったのだよ。」
「わかった、ありがとうね。」
あたしはミドリンにお礼を言うと、立ち上がって部室に向かった。
「…人事を尽くしても、お前だけは…。」
緑間真太郎は、優姫が座っていた場所を暫くじっと見つめてから、再びテーピングを直し始めた。
頭の中には、さっきの褒め言葉が反響していた。
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