KRK 's BSK

□読心
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桐皇学園高校バスケ部主将、今吉翔一。

独特なイントネーションでよく通る関西弁訛りの声に、何を考えているのかわからない、読めない上に食えない性格。そしてドS。腹黒。鬼畜。

人間?いいえ、妖怪サトリです。




「なあ、自分誠凛のマネージャーさんやろ?」



「…そうですけど、何か?」




我が誠凛がWC予選で桐皇学園に見事リベンジを果たした日。

会場の廊下で擦れ違った人物、今吉翔一に話し掛けられた。




「I.H.の時に青峰に蜂蜜レモンあげたやろ?それがめっちゃ美味くてな、ちょっと気になっとってん。」



「…はあ。それはどうもアリガトウゴザイマス。」




あたしはあまりこの人にいい印象がなかったから、とりあえず褒められたお礼だけ言って立ち去ろうとした。

その瞬間、腕を掴まれて、それは叶わなかったのだけれど。




「待ってーや。そんな露骨に嫌がらんくてもええやん。」



「…何が言いたいんですか、今吉サン?」




言葉を交わしたのも、こんだけ真近で見たのも初めてだけど、やっぱりこの人は何を考えてるのかわからない。

だから、少し怖い、というより苦手だ。




「そんな怖い顔せんでも…別にいじめようとしてるわけちゃうねんから。」




そう言うと今吉サンは、ふは、と笑って、あたしと目線を合わすように少し屈んだ。




「ワシら三年はもうこれで引退やからな、もう自分と会える機会ないねん。だから許したってくれへん?」



「…というと?」



「もう単刀直入に言うわ。名前と連絡先、教えてくれへん?」




一瞬固まった。え。何でよりによって誠凛のマネージャーのあたしの連絡先を?




「…ナンパですか?」



「ナンパ…になるんやろなーコレって。でももうチャンスないしなー。青峰に聞いたかってアイツ絶対絶対教えよらんし。」




少し参ったような表情で頭を掻く今吉サン。…意外と、常識人、なのか…?




「アカンのやったら、名前だけでも教えてほしいねんけど、それもアカン?」



「名前?何を今更。知ってらっしゃいますよね?そちらにはアオミーもさつきもいるんですから。」




そう言うと、今吉サンは手強いと感じたのか、少し考える仕草を見せた。




「自分なかなか頭ええなー。確かに名前は知っとるよ。でも本人から直接聞きたいねんやん。」




な?と胡散臭い笑みを向けられて、あたしは早く戻ってみんなとご飯食べて帰りたいしで、半ばヤケクソでポケットからメモを出して、さらさらとメールアドレスと名前を書いて今吉サンに突き付けた。




「元帝光でさつきとマネージャーをやらせてもらってました。今は誠凛のマネージャーやってます、桜井優姫です。桐皇学園の今吉翔一さんですよね?お疲れ様でした。」




矢継ぎ早にそう言って、今吉サンの手にメモをねじ込むと、あたしは靴先を返してみんなの元へと戻った。




「…手強いなあ。」




残された今吉サンが、手の中のメモを見つめながら呟いた言葉にも気付かずに。




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