KRK 's BSK
□読心
1ページ/5ページ
桐皇学園高校バスケ部主将、今吉翔一。
独特なイントネーションでよく通る関西弁訛りの声に、何を考えているのかわからない、読めない上に食えない性格。そしてドS。腹黒。鬼畜。
人間?いいえ、妖怪サトリです。
「なあ、自分誠凛のマネージャーさんやろ?」
「…そうですけど、何か?」
我が誠凛がWC予選で桐皇学園に見事リベンジを果たした日。
会場の廊下で擦れ違った人物、今吉翔一に話し掛けられた。
「I.H.の時に青峰に蜂蜜レモンあげたやろ?それがめっちゃ美味くてな、ちょっと気になっとってん。」
「…はあ。それはどうもアリガトウゴザイマス。」
あたしはあまりこの人にいい印象がなかったから、とりあえず褒められたお礼だけ言って立ち去ろうとした。
その瞬間、腕を掴まれて、それは叶わなかったのだけれど。
「待ってーや。そんな露骨に嫌がらんくてもええやん。」
「…何が言いたいんですか、今吉サン?」
言葉を交わしたのも、こんだけ真近で見たのも初めてだけど、やっぱりこの人は何を考えてるのかわからない。
だから、少し怖い、というより苦手だ。
「そんな怖い顔せんでも…別にいじめようとしてるわけちゃうねんから。」
そう言うと今吉サンは、ふは、と笑って、あたしと目線を合わすように少し屈んだ。
「ワシら三年はもうこれで引退やからな、もう自分と会える機会ないねん。だから許したってくれへん?」
「…というと?」
「もう単刀直入に言うわ。名前と連絡先、教えてくれへん?」
一瞬固まった。え。何でよりによって誠凛のマネージャーのあたしの連絡先を?
「…ナンパですか?」
「ナンパ…になるんやろなーコレって。でももうチャンスないしなー。青峰に聞いたかってアイツ絶対絶対教えよらんし。」
少し参ったような表情で頭を掻く今吉サン。…意外と、常識人、なのか…?
「アカンのやったら、名前だけでも教えてほしいねんけど、それもアカン?」
「名前?何を今更。知ってらっしゃいますよね?そちらにはアオミーもさつきもいるんですから。」
そう言うと、今吉サンは手強いと感じたのか、少し考える仕草を見せた。
「自分なかなか頭ええなー。確かに名前は知っとるよ。でも本人から直接聞きたいねんやん。」
な?と胡散臭い笑みを向けられて、あたしは早く戻ってみんなとご飯食べて帰りたいしで、半ばヤケクソでポケットからメモを出して、さらさらとメールアドレスと名前を書いて今吉サンに突き付けた。
「元帝光でさつきとマネージャーをやらせてもらってました。今は誠凛のマネージャーやってます、桜井優姫です。桐皇学園の今吉翔一さんですよね?お疲れ様でした。」
矢継ぎ早にそう言って、今吉サンの手にメモをねじ込むと、あたしは靴先を返してみんなの元へと戻った。
「…手強いなあ。」
残された今吉サンが、手の中のメモを見つめながら呟いた言葉にも気付かずに。
.