KRK 's BSK

□唯灯
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中学時代、紫原はわたしのことが好きだった、と思っていた。


だけどわたしは、誠凛高校に入って一年目の冬、それが間違いだった事に気づいた。


ウィンターカップで陽泉に勝利を収めた日、バスケへの執着心を垣間見せた彼の髪を結ぶヘアゴムには、卒業式の日に強請られてあげたわたしの帝光のブレザーのボタンが付いていたのだ。


過去形じゃなかった。

結局、最後までわたしに何も告げなかった紫原は、今に至るまで気持ちの欠片を捨てる事は出来なかったらしい。




「…ゆぴちん」




ウィンターカップで誠凛が優勝した夜。打ち上げが終わって、家に着いたのが22時過ぎで。

まさか、家の前で紫色の彼が待っているなんて思っていなかったわたしは、その場に呆然と立ち尽くした。




「え、待って、色々聞きたいことはあるんだけど…何時から?」



「んー…19時過ぎくらいかなー。秋田で慣れたと思ってたけど、やっぱ東京も普通にさみぃねー」



「何考えてんの!?」




慌てて自宅にその大きな体を押し込む。ソファーに座らせて、寝室から引っ張ってきた毛布を投げつけるように紫原に被せると、紫原は、アララ〜怒った?と彼独特の緩い口調で紡いで、首を傾げた。




「説明して!何でこの寒い中、わたしの家の前で3時間も待ってたの?」



「えー…説明ってゆーか、ウィンターカップ終わったし、オレ明日には秋田に帰るんだよねー。だから最後にちゃんと会っておこうかなーって思って、室ちんに家聞いたー」




どうせメールも電話も拒否られてんだから、会うには家の前で待つしかないしー、と紫原は毛布に包まったまま目元を少し伏せる。

いやタツヤは何サラッと人の家教えてんだ、と抗議のメールを送ろうとケータイを開くと、既にタツヤからsorryと一言だけのメールが来ていた。…次会ったら直接文句言ってやる。




「ねえってば。ゆぴちん聞いてる?」



「え、あ、ごめん聞いてなかった」



「オレの電話とメールの拒否外してほしいんだけどーって話ー」



「ああその話…」



「お誕生日おめでとうメールすら返ってきたしー。もう毎回エラー返ってくんの虚しいんだよねー」



「いや送んなきゃいいじゃん…」



「何で?ヤだよ。昨日はエラーでも今日は届くかもしんないじゃん。
 

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