BOOK6

□star
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「っ、優姫ちゃん、」




ツアー中だってわかってる。
けれど、「優姫ちゃんとおんなじ部屋、初めてだし嬉しい」なんて言ってはにかんだ木くんに、あたしの中で何かが弾けた。


ベッドまで追い詰めて、倒れ込む木くんを組み敷くと、木くんは半分恐怖、そして半分はどこか切なげな恋情を含んだ瞳であたしを見上げた。

そして、上擦った声で小さくあたしの名前を呼んだ。




「…今日は、ダメだって、ツアー中だし…。声、枯れちゃう…。

それに、隣の部屋に、光くんと有岡くんいるし…。」




普段こんな風に押し倒したりしないあたしの、いつもと違う圧倒感に素直に戸惑いを見せる木くん。


あたしと木くんの関係は、一種の服従関係のようなものだ。

不定期に、あたしがストレス発散に木くんを抱く。それだけ。
いつからか、何故か、そんな関係になっていた。

あたしにとって木くんは、反応は素直だし、最近はないみたいだけど前までは結構派手に遊んでたから身体を大事に扱う必要もないし、馬鹿で単純だしで、すごく使いやすい。

それに、きっと、木くんは、あたしの事が好きだから。本人から聞いたわけじゃないけれど、あたしを見る目や普段の反応でバレバレだ。

だから、あたしに抱かれているのか、それとも、好きだからこそこんな関係は嫌だけど、単純に断れないのか、それはわからないけれど。




「それって、木くんが声出さなければ問題ない話だよね?」




そう言って、にっこり微笑みかけると、木くんは見てわかるくらいに、かあ、と頬を染めてあたしから目を逸らした。




「…むりだって、…今日は、だめだよ…。」




そう言って、意思を表すようにそっと目を閉じた木くんに、あたしは押してダメなら引いてみよう、とベッドから降りて木くんに背を向けた。




「わかった。一緒の部屋にいたら手出しちゃいそうになるし、あたしいのちゃんと宏太の部屋で寝るね。」



「え、」




木くんの驚嘆の声にも振り向かず、軽く荷物を纏めようとケータイに手を伸ばす。

すると、後ろから腕を掴まれた。




「なに…?」




振り向くと、真っ赤な顔で、少し俯き気味の木くん。

そして、あたしの腕を掴む手に少し力が篭った。




「……やっぱり、おれのこと、好きにしていいから…やぶくん達のとこ、行かないで…。」




一緒に居たい。

そう言って、ちらりと顔を上げて不安げにあたしを見る木くん。

ああ、やっぱり馬鹿で、単純で、だけど、だからこそ可愛いと思う。


あたしはそっと笑顔を作ると、木くんの肩をベッドに押し倒した。




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