BOOK6

□touch
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気がついたら、同期で入った、事務所唯一の女の子、優姫を目で追うようになっていた。


仲良くなって、よく話すようになって、グループは違えど、薮とか光とかみんなでバカやったり、遊んだり、楽しかった。


それから、デビュー。グループ結成。優姫と、念願の同じグループになった。


Hey!Say!BEST。
薮と、木と、光と、大ちゃん、それに優姫とおれ。

Hey!Say!7。
圭人、山田、裕翔、知念、そして最年少の龍太郎。


事務所史上最多メンバーで結成されたHey!Say!JUMPというグループが組まれてから、なんだかんだ楽しかったし、優姫と一緒にいる事も増えた。

嬉しいし、楽しいし、もっと一緒に居たいと思う。


けど、これを恋だとは認めたくなかった。

割とプライドが高いのは自覚している。だからこそ、誰かを好きになるなんて何か悔しく感じるんだよね。

他から見ててもみっともないじゃん、片想いなんて。




「なー、やぶ。」



「んー?」




楽屋で退屈そうにソファーにどっかりと座って、半分寝かけてたやぶのセットされてふわふわの茶髪に後ろから話しかける。




「なに、伊野尾。」



「恋ってなに?」



「は?」




気怠げだったやぶの声が急にはっきりする。そして軽く振り向くと、メイク台の前に座るおれを怪訝そうな目で見た。




「何だよ急に。またわけのわっかんねー質問。」



「いやー、人生の先輩に恋愛の極意でも聞いとこうかなーと思いまして。」




そう言って茶化すと、やぶは、 意味わかんねー、って言ってくしゃりと笑った。

うん、その笑顔可愛いと思うよおれ。




「アレだ、相手の一番になりたいとか、側に居たいとか、守りたいとか思ったら恋なんじゃね?」



「…恋って認めると負けな気しねー?」



「まあ気持ちはわからなくもねーけど。そう思ってる時点でもう手遅れだろ。」




何となく聞いたつもりが、思いの外やぶの言葉は的を得ていて。

シャイボーイの癖に、いつの間にそんなに大人になってんだよ。

くそう、とおれの中のおれが頭を抱えた。




「認めちまうと自分自身どうしていーかわかんなくなりそーじゃん、恋愛って。」



「どーもしなくていんじゃね?好きにすればいいと思うし、例え伝わったとしても態度変えるような奴じゃねーだろ優姫は。お前も長い間一緒にいて、アイツの性格わかってんだろ?」




そう言って、ふ、と笑ったやぶに思わず溜め息をつく。




「…優姫の事なんて言ってねーけど?」



「お前おれと何年一緒にいると思ってんの?今更だろバーカ。」



「うっせ。」




やぶの馬鹿ヤロー。お前だって優姫の事好きな癖に。

そう言って悪態をつくと、やぶは澄ましたように鼻で笑って、




「おれは誰かと違ってもっと昔から既に認めてるしー。」




なんて言い放った。

あーあ、おれのポーカーフェイス、やぶには効かねんだよなー意外と。




「虚しくなんない?認めるとさ。」



「だからって、無理に抑え込んだって一緒じゃねー?」




それならもう開き直って気持ち大事にしてく方が楽しいしいいと思うけど。



そう言って笑ったやぶに、少し、ほんの少し考え方が変わった、気がした。




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