BOOK6

□much
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おれと、薮と、優姫は同期だ。

事務所に入った日こそ一緒だけれど、実際問題Jr.期間は薮と優姫はYa-Ya-yah、おれはJ.J.Expressで活動してたわけで、

いや、そりゃ仲は昔から良かったし、光もそうだけど、薮と優姫ともプライベートで遊ぶ仲だった。

だけど、やっぱりグループが一緒か別かっていうのはデカい。

絆とか仲間意識とかっていうのかわかんねーけど、ジャンプとして活動している今でも、薮と優姫は特別仲がいいように思える。



ここでひとつ、整理すべき点がある。2013年11月現在、ジャンプも五周年を迎え、なかなかに順風満帆なわけだけれど。

おれと優姫は、誰にも話していないけれど、今年の夏、サマリーの後から、ただの友達兼メンバーという関係から、恋人同士になった。

それは勿論今も続いていて。


サマリーのオーラス後、テンションが上がってるってのもあるし、夏だから、っていう開放感もあって、11年募らせてきた想いを本人である優姫に零した。

ダメ元だったし、言った後に「忘れて」って言うつもりだったけど、存外優姫が受け入れてくれて今に至る。



まあそれはいいんだ。そこまでは。死んでもいいって思うくらいに嬉しかったし、それから2週間くらいは夢なんじゃないかってびくびくしてたくらいだし。


ただ、付き合い始めると、今まで以上に薮と優姫の仲の良さが気になるようになった。



わかってる。メンバーだし、友達だし、仲がいいのは当たり前。

それに、内緒で付き合ってるワケだし、そうでなくてもメンバーに関しては口出しする事ではない。

大学の男友達が家に泊まった、とかならまた話は別だし絶対ヤだけど。ジャンプのメンバーが一人で優姫の家に泊まりにいくのだって今まで通り普通だし。

だけど、薮に関してだけ、おれは敏感になってしまう。


薮が優姫に恋愛感情を抱いてるのは知ってる。だけど、だから嫌なんじゃない。だって、その面で言えば光だって木だって一緒だ。

でも、薮は、おれより優姫と過ごしてきた時間だって長いし、当たり前に優姫の側にいるから。

たまにこうして醜く嫉妬をしてしまう。

前に、抑えきれずに優姫に零した事がある。




「…なー、優姫。薮の事好き?」



「え?宏太?そりゃもちろん好きだよ。」



「…じゃあ、おれは?」



「いのちゃんへの好きは別だよ。心配しないで。」




その時はそう言って笑った優姫に安心したし納得もしたけど。



今日、駅のホームでおれらのファンらしい女の子達の会話が耳に入って、不安が一気にせり上がってきた。




《やっば、今月のMyojo薮くん神がかってる!》

《うわぁぁ優姫ちゃんやばい超可愛い何これ!!!もう優姫ちゃんは薮とくっつけまじで!!》

《ほんと薮姫厨だよねミサキー。まあ確かに薮くんと優姫ちゃんお似合いだけどさぁ。》




誰かと優姫をカップリングさせるファンがいるってのは知ってた。

たまたま薮と優姫のファンの話が耳に入っただけだ。だけど、




《もう付き合ってたりして!》

《夫婦にしか見えない!》




おれの嫉妬と不安を掻き立てるのには十分だった。




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