BOOK6

□max
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優姫は昔から器用だった。

理系の勉強はちょっとニガテだったみたいだけど、ルックスは勿論、歌もダンスも文句無しに上手かったし、気配りも優しさも兼ね備えていて、アイドルとして天性の物を持っていた。


だけど、努力を惜しまない子で、いつも一生懸命にレッスンしていたし、後輩のJr.に優しく教えてあげたりもしていた。



おれは、そんな優姫の事が、入所してすぐくらいから好きだった。




「…あのさ、ホントは言うべきじゃないのかもしんないけど、おれ優姫の事恋愛対象としてすきなんだよね。ずっと昔から。」




そう伝えたのは、JUMPとしてデビューしてから、2012年のサマリーの時期だった。


どうしても独り占めしたくて。
ベストやセブンは勿論、Jr.達ひとりひとりにも優しく接する優姫を見て、大人気なく嫉妬なんてしたりして。

特別扱いされたくなった。優姫に。それだけの理由で、11年間募らせた想いを本人に吐き出した。


冷静な風を装いながらも、手汗は半端じゃねーし心臓もバクバクだし、軽く意識とんでんじゃねーのってくらいに緊張した。

入所して初めてステージに上がった時よりももっともっと。




「…んー、知ってるよ?」



「え、」



「読めない読めないって言われてるけど、あたしは割とわかりやすいと思うんだ、いのちゃんって。

あとね、あたしも好きだよ、いのちゃんのこと。」




頭が真っ白になった。

バレてたって事に対する衝撃とショックもかなりのもんだったけど、優姫がふわりとおれの好きな笑顔を見せて、おれの手を握ってくれた。

それが一番の衝撃だった。




「お、お粗末様です、」




夢でも見てんじゃないか、って思わざるを得ないような状況で、今すぐにでも幸せ過ぎて死ぬんじゃないかって思って、混乱した末にわけわかんない事を口走ったおれに、優姫はけたけたと笑った。


この時のおれは、同時にふたつの事を学んだ。

ひとつは、いきすぎた幸せでひとは死なないという事。

もうひとつは、その時のおれは、間違いなく世界で一番幸せだったであろう事。
 

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