BOOK6
□take
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髙木雄也という人間は、とにかく単純でわかりやすい。一言で言えば馬鹿だ。
だから、髙木くんがあたしに向ける視線に込められた感情だとか、笑顔に隠された思いだとか、手に取るようにわかってしまって。
あたしの事が好きなんでしょう、とはっきりそう問うと、髙木くんは、やっぱりバレてた。なんて言って困ったように笑った。
それから、髙木くんはあたしにとって“都合のいい人間”になった。
と言っても、あたしが好き好んでそうしたわけじゃない。ただ、髙木くんの気持ちに答えられないから、傷付けたくなくて、それならいっその事嫌われよう、としたのがキッカケだった。
「なんか今日、すっごいイライラしてるの、あたし。だから八つ当たりさせて。」
だけど、髙木くんはあたしの言う事に何ひとつ逆らわなくて、ただ従順に言う事を聞いた。
「…撮影あるから、顔は避けてもらえたら嬉しいな。」
嫌うどころか、視線も態度も相変わらず恋情を含んだそれで。
嫌われたいあたしがどんな酷い事や無茶な注文をしても、髙木くんはただ素直に従うだけで。
その内に、そんな都合のいい関係が出来上がった。
あたしは、髙木くんに思いつく限りの酷い事をした。
印象に残ってるのは、休日の朝に髙木くんを呼び出して、彼氏とデートだから送って、と、お兄ちゃんとの待ち合わせ場所まで車で送らせた事。
当然あたしのお兄ちゃんの顔なんて知らない髙木くん。
待ち合わせ場所でニコニコ手を振るお兄ちゃんの近くで車を止めてもらって、あたしが降りる直前に、髙木くんは瞳を潤ませてへにゃりと笑って、いってらっしゃい、楽しんでね。とあたしに声をかけた。
その時の切なげな表情に、流石にしばらくは罪悪感でいっぱいだった。
それでも、そんな最低な人間像を被ったあたしに恋心を抱き続ける髙木くんに、我慢の限界が来た。
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