BOOK7
□fit
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「それって、おれも、権利あるよね?」
あたしが、ストレス発散に適当な男を抱いているのを知ったいのちゃんからの、言葉。
「…それは、どういう意味?」
あたしの目をその黒目がちな目でじっと見つめるいのちゃんにそう訊くと、いのちゃんは、そっとあたしとの距離を詰めて、あたしの首に両腕を回した。
「…おれのことも、抱いて、って言ってんの。」
少し掠れたか細い声に、どくん、と加虐心が掻き立てられる。
「…おれが、優姫のこと、好きなの…気付いてんでしょ?」
付き合って、って言ってるワケじゃないから、安心して。
いのちゃんはあたしの肩口に顔を埋めながらそう言った。
知ってた。いつからかはわからないけれど、半年前あたりから、自分に向けられる想いに。
いのちゃんは賢いから、それに気づいてた、というよりも、わざとあたしが気付くように仕向けてたんじゃないかな、と思った。今日のために。
「…いのちゃん。」
そっと頭を撫でると、いのちゃんはゆるゆると顔を上げて。
初めてこんな至近距離で見たいのちゃんの目は、切なさでいっぱいだった。
いつもテキトーで、飄々としてるいのちゃんの、見たことない表情にちくりと胸が痛んだ。
「わかったから…そんな目で見ないでよ。」
いのちゃんの頬に手を添えてそう言うと、いのちゃんは緩く微笑んで、あたしの唇に自分の唇を重ねた。
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