BOOK7

□loving
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個人での撮影の仕事を終えて家に着いたのは、もう20時を過ぎた頃で。




「あれ?」




ドアを開けると、玄関に見慣れた靴が並んでいた。そっか、今日の個人での仕事は朝から夕方までだって言ってたっけ。




「いのちゃーん、来てるの?」




そう言いながらリビングに入ると、ダラダラと何かの映画を映すテレビの前のソファーに丸まって眠る、メンバーで恋人の伊野尾慧の姿があった。




白い肌に、長い睫毛の影が落ちていて、すうすうと寝息を立てる、ぽってり色付いた唇にそっと人差し指を乗せた。

役柄で金髪にしてからの黒染めで真っ黒の髪。やっぱり、いのちゃんは黒髪が似合う。




「いのーくーん、ただいま。」




指を唇からほっぺたに移動させて、ツン、と突っつくと、いのちゃんは掠れた声をむにむに絞り出して目をゆっくりと開けた。




「ん…おかえり…。明日、休みだから…来た。」




そう言って、いのちゃんはあたしに抱き着くと、甘えるように肩口に顔を埋めた。




「ごはんは?食べたの?」



「…夕方に、食べたっきり。」



「何食べたの?」



「…かっぷらーめん。」



「もー、また手抜きして。ちゃんとしたごはん作るから…。」




何作ろうかな、なんて考えながらそっと引っ付くいのちゃんを剥がそうとすると、何故かそれに抗うようにいのちゃんの腕の力が強まった。




「…いのちゃん?」



「…まだ、メシいらない…から、先に…、」




少し緊張したような、だけど甘えた声色でそう囁くいのちゃんに、あたしは緩く微笑んで首筋に唇を落とした。




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