BOOK7
□sugarless
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髙木くんは、あたしと付き合った時、すでに処女じゃなかった。
見た目に反して、割とおっとりした性格な上に、優しく流されやすい彼は、所謂 “ソッチの人” も多く存在するウチの事務所で、迫られて断りきれずに、なんて事が数回あったらしい。
半分、レイプ紛いだったのかもしれないけれど、本人は流された自分が悪いから、レイプではなかったと言う。
とにもかくにも、高木くんにとっては黒歴史なわけで。
そんな高木くんに関する噂は、デビューして少ししてから、ぴたりとなくなった。
その頃はまだ、本人からそういう事に関して直接聞いたことはなかったけれど(そもそもそこまで仲良くなかった)、Jr.時代からいろいろと耳にしていた噂の延長線上で、高木くんが男の人と関係を持つことをやめたと知った。
そこから暫くして、あたしは高木くんに告白された。
ホモなんじゃないの？と訊いたあたしに、高木くんは困ったように眉を下げて、へら、と笑ったのがすごく印象的で。
やっぱり、優姫ちゃんも知ってるんだね。おれのそーゆーウワサ。ホモ、ってとこだけ、否定しとくね。
そう言って、髙木くんはあたしの前で頭を下げると、そのまま小さな声で言葉を紡いだ。
伝えたかっただけだから。聞いてくれて、ありがとう。
頭を上げて、切なげに不恰好な笑顔を作った髙木くんは、そのままあたしに背を向けて、去ろうとして。
気がついたら、髙木くんの服の裾を引っ張っていた。
「好きじゃないし、正直過去とは言え遊んでた事に対して嫌悪感しかないから、酷い扱いすると思うけど、それでもいいなら付き合ってもいいよ。」
あたしは何でそんなマイナスの気持ちしか抱いてないのに、付き合ってもいいと思ったのか。
そして、切れ長の目を丸くさせて驚きの表情を浮かべた髙木くんは、何でそんな条件に頷いたのか。
わからないけれど、あたしたちはそうして付き合う事になった。
今から半年前の事だった。
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