BOOK8

□air
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どうしようもなく苦しいけれど、この苦しさの原因であるこの人に、出会わなければよかっただなんてどうしたって思えないから、ぐるぐる回って、またひとりで苦しくなる。




メンバーの中で、優姫ちゃんが一番遠い存在だった。

年下でも、おれから見れば先輩で、それに異性で、Jr.時代に薮くんや光くんみたいに話した事もほとんどないし。

共通点もなければ、話題もない。

それに、いや、この場合はだけど、かな。


おれはデビュー前から、優姫ちゃんの事がずっと好きだった。




おれを組み敷く優姫ちゃんの、満足そうな顔を見上げると、胸がぎゅう、と締め付けられる。


こんな関係になったのは、去年の冬で。何となく、コンサートの後の高揚したテンションに流されてだった。

嬉しさと、悲しさと、羞恥と快感に、シーツを手が折れるくらい強く握り締めたのを覚えている。




「木くん、何考えてるの?」



「…、…優姫ちゃんのこと…」



「あは、可愛い返事ありがとう」




目を細めて笑う優姫ちゃんに、ドキドキして、同時に、切なくなる。

本当なのに。おれは、優姫ちゃんのことしか考えてないのに。




「……今日、は…オモチャ、やだ…。指で、シて、…優姫ちゃんの、指…。…ご、ゴム、使ってくれて、いいから…」




ちょっとでも、優姫ちゃんを近くに感じたくて、いつもはオモチャでされることが多いけど、厚かましいお願いをしてみた。

そしたら、優姫ちゃんは優しく笑っておれの頭を撫でたりするから、必死に涙を堪えて俯いた。


こんなに、大好きなのに。




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