BOOK8

□distance
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優姫ちゃんに、彼氏が居ること。

優姫ちゃんが、おれのことなんてちっとも好きじゃないこと。

おれは、優姫ちゃんにとって、ストレス解消道具でしかないこと。

全部、全部、知ってる。



いっそ、嫌いになれたら。楽なんだろうなって、何回も考えた。


でも、嫌いになんてなれるワケなくて。むしろ、抱かれる度にどんどん好きになって、苦しくて、切なくて、いっそこのまま、身体ごと、心が潰れちゃえばいいのに。


そしたら、苦しくないのに、って。


希望の欠片もない、それこそ0.0001%だって見えない、おれの恋心は、どこまでもしぶといらしい。




「…う、っぅ、…っぐ、」



「ほら、ちゃんと腰上げて。」



「あ、っうぅ…、」




ズン、とお尻の奥に、無機物が押し込まれる感触と、やり場のない強烈な快感に、枕に涎と漏れる声を吐き出す。


今日は、海外から輸入した、媚薬剤入りのバイブかなんか、って言ってた気がするけど、思考回路があやふやで、あんま覚えてない。




「なに逃げてんの、ダメでしょ?ちゃんと言う事聞かないと。」




無意識に引いてた腰を掴まれて、引き寄せられて。

さらに奥に入り込もうとする玩具に、引き攣った喘ぎ声が漏れた。




「、っは、っぅ、優姫ちゃ、っも、」




入んない、


そう訴えかけるおれの声なんて、まるで無視で。



どうしようもなく、持て余す程の快感を押し付けられて、ぼろぼろ泣きながらおれは、優姫ちゃん、と声にならない声で彼女の名前を紡ぐ。


そうしないと、顔も見えないうつ伏せの体制でこんなメチャクチャにされてると、知らない人に犯されてる錯覚に陥って、不安で、怖くなるから。

優姫ちゃんの、おれを攻め立てる声しか、優姫ちゃんを実感する術がないから。




「脚、震えてる。ほんと、可愛いね、木くんは。」




そりゃ、だって、もう3回もイカされてるんだもん。脚だって震えるよ。

ああ、そうやって、気まぐれに「可愛い」だなんていうから、もう顔も熱いし、心臓もバクバクで死んじゃいそうだ。




「ぅ、っうー…っ、」




熱い。熱いよ。


ぐぐ、と枕に顔を埋めたら、泣きすぎて擦れた目が痛くなった。




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