BOOK8
□wonder
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いつでもヘラヘラ、ニコニコ、笑っている木くんに、苛立った。
特に、あたしに対しては人一倍ヘラヘラしている気がして、気に入らなかった。
挨拶を返すだけで、軽く話しかけるだけで、対談が被るだけで。木くんは、へらりと笑ってあたしを見る。
不快だ、と。告げたその日、木くんは眉を下げて、いつもと違って悲しげに、力無く笑った。
「ごめんね、おれ、優姫ちゃんのこと…その…好きで…、だから、…なんか、なんか、そんな、不快感を与えたいワケじゃなくって、…」
木くんは、言葉に詰まったようにオロオロと視線を彷徨わせると、口を噤んでそのまま床に落として俯いた。
「好きって、どういう“好き”のこと言ってるの?」
「…えっと、…お、女のコとして、ずっと…、Jr.の時から、」
もう迷惑かけないから、あんまり話しかけないようにするから、好きでいるのだけは許してほしい。
そう言って、木くんは怒られた子どものように頭を項垂れた。
それが、あたしの加虐心を掻き立てた。
気がついたらあたしは、木くんの手を引いて、空き部屋のドアを開けていた。
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