花明かりと雨
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退部の意志を告げると、“かつては赤司くんだった彼”は赤とオレンジ色を灯す瞳を緩やかに細めて、冷然とした表情に形だけの笑みを浮かべた。
「君はもう少し賢いと思っていたが、どうやら僕は君を買い被り過ぎていたようだね」
「…赤司くんを、間違いだと追いやった“君”が憎いよ、赤司」
「そうか。ただこれだけは覚えておけ。絶対は僕だ」
冷ややかな彼の声を背に、わたしは帝光バスケ部を後にした。
きっと引き止めたい気持ちを押し殺していたんだろう、涙を浮かべたさつきを思い出して、心の中でごめんと謝る。
「黒子っちも桜っちも、バスケ部辞めるって何でっスか!」
さようなら、黄瀬くん。
「真剣にやったって意味ねェだろ。オレに勝てるのはオレだけだ」
さようなら、青峰くん。
「誰がどんなプレーをしようが関係ない。オレはオレの人事を尽くすだけなのだよ」
さようなら、緑間くん。
「つーかダルー…黒ちんとゆぴちん二人仲良く辞める意味がわかんないんだけどー」
さようなら、紫原くん。
友人達の顔と言葉が浮かんでは消える。
さようなら、帝光バスケ部。わたしの青春。
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