KRK 's BSK

□葛藤
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「…っ、痛…っ、」



「むっくんお菓子好きでしょ?」




そう言うと、辛そうに顰められた瞳があたしを映して、少し揺れた。


あたしの右手には凍ったチューペット。

それを、解しもしないでそのままむっくんの後ろに突っ込んで動かす。




「冷た、ぃ、」




それを3分の1くらいまで突っ込むと、むっくんは苦しそうに呻いた。

あたしがこんな風に怒ったり、酷い扱いした事ないから、きっと今は戸惑いでいっぱいだろうなーなんて。




「言葉の暴力は、こんなの比にならないよ。一生立ち直れない事だってあるんだから。」



「っ、本当の事言って、何が悪いワケ?…っ、優姫ちん、いつも、周りの味方ばっか…、」



「それはむっくんが悪いからだよ。わかんない?」




強引に挿れられたソコは、真っ赤に腫れていて。霜焼けになったらちょっと可哀想かもね。

萎えたままのむっくん自身。
今はまだ、ね。



ぐっ、と更にチューペットを押し込むと、むっくんの口から悲鳴に近い声が漏れた。

冷たいし痛いし、精神的にもクるだろうな、これは。




「…っ、優姫ちん、痛い…っ、も、これ以上、…入んな、」




少し掠れた声。弱気になってきたらしい。

手は縛られたままだから、声を抑える事も出来ない。代わりに、噛み締められた唇から血が滲んでいた。

そんな姿を可愛い、なんて。加虐心が掻き立てられて、本来の目的を失いそうだ。




「じゃあ、部員の子に謝る?」



「…それ、は、ムリ…っ、オレ、悪くねーもん…。」



「まだそんな事言ってんの、」




そうは言いつつも、段々と意識が朦朧としてきたむっくんからは見下ろされる威圧感が消えていて。

ただ、霞んだ瞳であたしを見つめるだけ。

これなら、もうちょっとで折れるかもね。



ずぶずぶとチューペットを出し入れする。セーター越しに握っているのに、あたしの手まで冷たくなってきた。




「ぃ、あ、いた、痛い…っ、」




びくり、むっくんの肩が跳ねて、腰が抜けたのかダラリとむっくんの脚の力が抜けた。




「…っ、優姫ちん、ごめん、謝るから…、許して、嫌いに、なんないで…。」




そう言って力なく顔を上げたむっくんの、乱れた前髪で隠れた瞳からぼろりと涙が零れ落ちた。

あーあ、泣かせちゃった。




「部員の子にも、明日謝れる?」



「うん、」



「これからはちょっとは考えて発言できる?」



「うん、」




むっくんは怒られた子どもみたいに項垂れて小さく返事をする。

これで本当にこの悪い癖が治るのかはわからないけれど、少し期待をしてもいいかもしれない。

それに、プライドを捨ててまで、あたしに嫌われる事を嫌がるむっくんが可愛くて。




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