color〜Six Elements Stories〜

□第一章 黄の巻
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プロローグ〜星よりの報せ〜





 星見の塔の最上階。そこにある富庵国最大の天体望遠鏡で星を観測していた御土は、その結果を紙に記録しながら大きなため息をついた。自分の状況が大きく変わることを予想して。
 一つ下の階に下りると夜着に上着を羽織った三つ年上の姉、秘土が心配そうな表情で立っていた。
「姉上。ここにそのような格好では冷えますよ」
「今来たばかりだから大丈夫よ。それより観測結果は?」
 御土は黙った。それだけで秘土は気づいたようで背を向ける。
「場所を移しましょう」
 御土の答えを聞くこともなく秘土は歩き出し、御土は黙ってそれに続いた。
 同じ階にある会議室に行くと秘土は暖房をつけ、お茶を淹れる。御土は席の一つに腰を下ろしてそれをぼんやりと眺めていた。
「さて、観測結果を見せてもらってもいい?」
 二人分のお茶を用意して席に着いた秘土に御土は素直にそれを差し出す。その内容を確認しているうちに秘土の表情は厳しくなっていった。
「…最近何かが変だなと感じていたけれど…こんなにも悪い状況だなんて」
 つぶやくように秘土が言う。御土は黙ったままだった。
「とりあえず母上にお伝えしましょう」
 秘土の言葉に御土はただ頷いた。

 この世界の神話では、世界は一人の存在が創ったと言われている。その創造主は六つのエレメント、赤、青、黄、緑、白、黒を以てこの世界を創った。そしてこの世界から創造主が旅立つ時、この世界に何かあった場合それを解決する為にエレメントを操る能力を持つ男女を一人ずつこの世界に遺していった。その者達はそれぞれ操れるエレメントに女は巫女、男は守をつけて呼ばれ、その能力は子供に伝わっていった。
 この富庵国は神話の中にも登場する六大国の一つで、留初国と並んでその神話が根強く残っている国。他の国々では巫女や守を見ることがなくなり、伝説の話と思っている者も多かったが、富庵国では健在だった。というより皇族の直系こそが特別な家系の子孫だったのである。そして巫女は巫女姫、守は守護皇子と呼ばれ、星見の塔で過ごすこととされていた。現在は秘土が巫女姫、御土が守護皇子だった。
 巫女姫と守護皇子が星見の塔で過ごすこととされたのは凶事をいち早く察知する為。そして世代交代で役目を終えるまで星見の塔を出ることを禁じられていた故、巫女姫と守護皇子が塔から下りてくることは最大の凶事となっていた。だが秘土も御土も思っていた。その最大の凶事が現実になろうとしていると。
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