color〜Six Elements Stories〜

□第一章 赤の巻
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プロローグ〜突然の旅立ち〜





 赤火は相棒であるフェニックスモドキの火羽を連れておつかいに出ていた。
 赤火の村からさほど離れてはいないが、村人が近寄ることのない場所、赤の森へと。

 事の発端は母、宮火からの言葉。この手紙を赤の森の主に渡してきてと。
 もちろん赤火は嫌がった。赤の森は火の魔獣達が棲む特殊な森。いくら火羽がいるとはいえ、できることなら行きたくないと。
 しかし何度も何度も宮火に言われ、渋々行くことを了承したのだった。

 森の入り口で、赤火はまず森を見渡した。森の木々は燃えているにもかかわらず、炭化することはない。普通に考えれば異様だ。しかし心を決めると赤火は森の中に踏み込む。
 その瞬間、たくさんの鋭い視線を感じて思わず身をすくめる。背筋が凍りつく程の殺気。いつでも火羽を放てるように赤火は身構えた。
 しばしの静寂の後、突然戦闘は始まった。様々な魔獣が一斉に赤火と火羽に飛びかかってくる。あまりの数に火羽はあっという間に餌食にされてしまった。
 赤火も突撃され、火炎を浴びせられ、地面に倒れ込む。それでも容赦なく繰り出される攻撃に死を覚悟した。
「やめなさい!!」
 鋭い女の声が響いた。一瞬静まり返ったものの、抗議しているのかぎゃあぎゃあと耳障りな音が耳に届く。
「その人は紅のお客様。これ以上手を出せばどうなるか…わかるよね?」
 また辺りが静まりかえる。そして次第に気配が遠ざかっていった。赤火は動かない体をがんばって起こす。その目に入ったのは、自分と同じ位と思われる少女。
「どうにか無事みたいですね。とりあえず紅のところへ」
 そう言って手を差しのべてきた。赤火も手を伸ばしたものの、傷つきすぎて立ち上がれない。
「仕方ないですね。…火影」
 少女に呼ばれ、一匹の獣が前に出る。
「ごめんだけど紅の館までお願い」
 火影と呼ばれた獣はわかったというように小さく鳴くと、赤火を自分の背に乗せて歩き出す。助かったと思って安心した赤火は意識を手放した。
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