短編

□運命の輪の中に、君が居た事が何よりも嬉しくて
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空が高い。

鳶が優雅に空を舞っている。

俺も今そこに行くから。

手を延ばせば届きそうな青。

俺の蒼色は地に堕ちて、

鳥が舞う空は澄んだ青色で、

空に延ばした俺の手は紅く染まっていて。





ここで終わり。

俺はもうすぐ俺の生にperiodを打つ。

思い起こせばろくな人生じゃなかったかもしれない。

母親に蔑まれ、

父を殺め、

弟を殺した。

この手で幾人もの命を奪った。

平気で人を殺めた。



でも、自分の『死』はひどく恐ろしくて。






目を閉じればアイツが浮かんでくる。

俺が唯一愛した女。

もうそいつに会う事も、愛を囁く事も出来なくなる。










もっとお前を愛したかった。












「…様っ」

頬に伝わる冷たい水。

「政宗様っ!」

俺の名前を呼ぶ。

そっと目を開ければ愛しい君が。

君はボロボロ泣いて。

俺のために泣いているのか?

涙を拭ってやりたくて手を延ばす。

でも体が言う事を聞かない。

体が震える。

震えながらも精一杯手を延ばす。

「…泣くな…よ…」

「政宗様っ!」

俺の手を握る君の手は小さいが暖かい。

この手に、

この体に、何度触れただろうか。

君に触れれば歯止めが効かなくて。

君を抱く度、愛は確実に積もっていって。

いつだって俺は君を求めた。






お前が俺に『愛』というものを教えてくれたから。






だからきっと俺は今、こんなにも心が穏やかなのだ。






「…アンタに会えて…良かった…ぜ…」












俺の人生に君がいた事が、俺にとっての最高の餞で、

最後に君に会えた事が最高のperiod。












(願わくは君の心にずっと俺が居るように)








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