ONE PIECE

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『暴きたい唇』sample





 島が近い。
 その報せを受け、上陸の準備と期待に、モビーディック号は騒がしくなった。
 白ひげの指示を受け、補給部隊と調整を済ませたマルコは、部屋に戻る途中に通り掛かった食堂に、エースの姿を見つけて足を止めた。
「エース!」
 声を張れば、仲間と談笑していたエースが振り返る。そして、マルコの姿を見つけてたちまち破顔した。
 手招きに近づいてきたエースを引き連れ、廊下の端に寄ったマルコは誰もいない事を確かめると、油断しきっているエースの耳朶に吐息を吹き掛けた。
「ひァっ…」
 首を竦めるエースに気を良くして、マルコは唇の端を持ち上げる。
「マルコ…!」
「お前はどこもかしこも敏感だが、耳が一番弱いよい」
 耳を押さえ、涙目になっているエースが睨み付けてくるが、そんな事を気にするマルコではない。
 エースを呼んだ本来の用件を切り出した。
「今度の上陸、お前の時間を全部もらって良いかい?」
「え?」
 睨み付けていたエースの瞳から険が消える。
「今回の停泊は五日間。一番隊と二番隊が初日から先発で上陸する事になったんだが…先約があるかい?」
 エースは首を振って、マルコのシャツを掴んでくる。
「嘘じゃねぇだろうな?」
「嘘」
「何っ?」
「じゃねぇよい」
 素直過ぎる反応のエースにほくそ笑みながら、マルコはその額を軽く弾いた。
「久し振りにゆっくり、二人きりで過ごさないかい?」
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