ONE PIECE

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『朱い不死鳥』sample


「マルコって、可愛いとこあるよな…」
 ポツリと零したエースに周囲の視線が集まった。
 今まで各々の事に集中し、エースたちのやり取りなど気にしていなかったはずなのに、今は食堂内全ての視線と耳がエースとマルコに向けられているのを感じた。
 席を立ったサッチは近づいて来ると、マルコの顔を指差した。
「マルコって…マルコか?」
 頬を震わせるサッチに、周囲も同調する。
「この白ひげ海賊団の猛者を纏め上げてる一番隊隊長?」
「不死鳥と呼ばれて敵にも畏れられてるこいつ?」
「女は使い捨てのオヤジ一筋」
「融通がきかない頑固者」
「海賊のくせに守銭奴で」
「無愛想で」
「口下手で」
「うわばみだから酔わせた上での戯れ言も悪戯もできねぇし」
「パイナップル頭で」
「足癖悪くて」
「“よい”とか言っちゃってるこのオジサンが?」
「よく見ろ、悪人面だぞ?」
「知ってるか? 獲物を見つけた時のこいつの顔! 獲って食われちまいそうな極悪さだ」
 サッチに続いて周りから次々と並べ立てられた形容に、当の本人の顔が引き攣る。
「お前らがおれをどう思ってるのか、よぉくわかったよい…」
「いででで…ッ!」
 サッチのこめかみに拳を当てて抉りながら、マルコが低く唸る。
「何でおれだけ…っ!」
「たまたま近くにいたからねい」
 逃げたサッチを追う事まではせず、目を眇めたマルコは、エースに視線を向けてきた。
「お前はいきなり、何ふざけた事を言い出すんだよい」
「ふざけてなんかいねぇよ」
 気負う事なく、エースは返す。
「だって、普段は皆が言うような“隊長”なのに、本当は子供っぽくて、負けず嫌いで、甘ったれで、寂しがりで…」
「待て待て待て待て待て」
 サッチにストップを掛けられ、エースは口を噤んだ。
「エースくん…それ、誰の事かな?」
「だから、マルコ」
 一瞬の沈黙の後、周囲から一斉に溜め息が零される。
 エースは唇を尖らせた。
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