ONE PIECE

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『トラブルメーカー』sample


 春島の海域を行く船を押す風は暖かく、波も穏やか。
 まさしく平穏な日常と言える、午後のひと時。
 最初、異変に気付いたのはサッチだった。

「オヤジ、エースがいねェんだ」

 毎日三時にはおやつをねだりに来るエースが、今日は一向に来ないのだと言う。

「どっかで寝込けてるんじゃないのかい?」

 エースは幼子ではないのだ。少し姿が見えないだけで慌てる必要はない。
 白ひげと航海長と共に、今後の針路について話し合っていたマルコは、深く考える事もせず応えた。
 途端、周囲から反論が飛んでくる。

「いや、あいつがいつも寝込けてる船首部分にも、見張り台にもいない」
「色々聞いて回ったが、食堂で昼飯を食ってたのを見たのを最後に、誰もエースを見ていないらしいぞ」
「ストライカーは所定の場所にあったから、船から離れた訳じゃなさそうだ」

 サッチだけではなく、他の隊長たちにも口々に言われて、マルコは白ひげを仰ぎ見た。
 顎に手を当て、小さく唸った白ひげが、ポツリと零す。

「…海に落ちたか?」
「オヤジ!」
「手分けして探せ! いや、船を戻せ! 急げ!」
「エースが海に落ちた!」
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