ONE PIECE

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『甘美なおあずけ、傲慢な悪戯』sample




 エースは仲間に好かれている。
 エースの率いる二番隊隊員だけでなく、白ひげ海賊団に属する仲間はこぞってエースを構おうとし、太陽みたいな笑顔を向けてもらおうと奮闘する。
 食べ盛りのエースに美味いものを差し出し、考えるより先に動く方が得意なエースの代わりに書類整理を買って出る。
 みんなのオヤジである白ひげ、エドワード・ニューゲートも例外ではない。天真爛漫な末っ子を殊の外可愛がり、甘やかす。
 だがそんな連中を余所に、マルコはエースをからかう方が楽しみだった。




 メインマストの梁の上に跨がったエースを見つけたマルコは気配を消し、物音を立てないように近づいた。
「こんなとこにいると、また海に落ちるよい」
「ぅわわわっ」
 突然声を掛ければ、驚きに大きく飛び上がったエースはバランスを崩し、マストから落ちそうになる。
 それを見越していたマルコはすかさず手を伸ばし、必死に振り回されている腕を捕まえた。
「ほら、言っただろい?」
「マ、マルコが驚かすからだろ…ッ!」
 噛み付く勢いで怒るエースの額を、マルコは指先で押し戻す。
「何を言ってんだよい。放っておいたってその内寝ちまって落ちるだろい? その前に教えてやったんだから感謝して欲しいくらいだよい」
「なっ…注意するにしたって、もっと他に声の掛け方があるだろ!」
 白ひげ海賊団に入ったばかりの、手負いの獣のような威嚇とは違う。純粋に驚かされた事に対する不満に怒るエースは、歳相応の表情を見せる。
 赤子が保身から笑顔を振りまくような、誰にでも向けられる笑顔とは違う。怒るという事は、ぶつかっていっても受け止めてもらえるという信頼がなければ、起こりえない感情だ。それを向けてもらえるというのは存外嬉しいものだ。
「何、にやにや笑ってんだよっ」
「お前が可愛くって、つい。悪かったよい」
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