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□銀魂(土方受)
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『銀色の比率』





 夜も更け、日付が変わろうとしている時……
 年中閑古鳥の鳴く万事屋の戸を叩く人物がいた。





「そんでよ〜、近藤さんは『お妙さんが、お妙さんが』って愚痴んだぞ…俺が酌してやってんのに…」
(それは今のキミも同じだよ…)
 銀時は土方のお猪口に酒を注ぎながら、こっそりと溜め息を吐く。
 目元をほんのりと染め、唇を濡らしながらむくれる土方は物凄く可愛い。―――が、その口から零れるのは甘えた囁きでも、色っぽい誘いでもなく、愚痴。しかも、銀時ではない男に対しての。
 夜中に突然現れた土方は、来る前にもかなり飲んでいたらしく、理性の箍が外れたように胸中を晒け出す。
 いつもはガードが堅くて、少しも窺えない土方の心。その心が占めているのは予想通りというか、何というか……
(面白くないんだよね〜、好きな子から他の男の名前聞くのって…)
 土方が近藤を想っている事はわかり過ぎる程にわかる。身内への親愛以上、恋愛未満の信愛。
 隊服を着ている時は勤務中で、銀時には気軽に声を掛ける事も許されていないのに……近藤とは飲んでいたのだ。仕事上がりの副長として……
 万事屋の戸を叩いた時には着込まれていた、ストイックな土方に合った真選組の隊服の上着は、今はハンガーに掛けられ、壁から二人を見下ろしていた。銀時と向かい合う時は、完全なるプライベートという訳だ。それを素直に喜んで良いのか、悲しむべきなのか。
 銀時としては、一線引かれてしまったようで面白くないというのが本音だ。
 近藤の名前を口にする時、ほんの僅かに口許を弛める土方は、銀時の名前を口にする時、そんな表情はしてくれない。否、名前すらまともに呼んでくれない時もある。地味の代表である山崎ですら呼ばれているのに…土方の命を狙うS星の王子なんか、下の名前を呼んでもらっているのだから羨ましい限りだ。
(いや、羨ましがってる時点で負けてねぇ? オレ…)
 今一つ、自信を持って“恋人”と思えない。身内とその他として線引かれた“差”―――悲しい現実。
「聞いてンのか、万事屋っ」
「はいはい、聞いてますよ、土方クン」
「ホントかぁ〜? ……ん? どこまで話したっけ? ああ、近藤さんが……だから聞けって、天パーっ」
(万事屋の次は天パーですかっ)
 “万事屋”と呼ばれた事に対し“土方”と呼び返してやったのに、全然気に留めた様子がない。
(くそ…っ)
 苛立ちのままに酒を呷っていると、土方は潤んだ瞳で睨みつけてくる。
 こんなに色っぽく見つめてきているのに、土方の頭の中は近藤の事でいっぱいなのだ。近藤は“仲間”で、自分は“恋人”なのに、理不尽過ぎる。
「…土方クンの大切さを感じさせる為に家出してきたんでしょ?」
 声に苛立ちが滲むのを止められない。
 銀時は、自分のお猪口を置くと、身を乗り出して土方に顔を近付けた。
「オレは構わない、って言ってるじゃないの。ずっとここにいてくれても…」
「よろ…っ、ん……!」
 可愛くない事を言う唇を塞ぎ、ソファーの上に押し倒す。
 手探りで解けかかっていたスカーフを解き、シャツを乱して、手に吸い付くようなきめ細かい肌を撫で上げる。ズボンの上から土方のモノを優しく揉み、劣情を促す。
 土方は、銀時の下でピクピクと身体を震わせた。
「…ふ…ぅ…っん…」
 合わせた唇の隙間から土方の吐息が零れ落ちる。耳朶を擽るそれに銀時はほくそ笑み、自分の欲望を押し付けた。
 そうすれば、土方の頬が酒のせいではなく、紅くなる。
「ん、ァ……っ…」
 唇を振り解いて仰け反った白い喉に軽く歯を立てて、できた窪みを確かめるように舐め上げる。徐々に下の方へ唇を滑らせ、胸や脇腹に吸い付き、舐め上げると、土方は堪えきれないように腰を跳ねさせる。
 思い通りに反応する躯が愛しい。
「嫌な事を忘れるくらい、抱いててやるよ」
「あ…」
 弛緩した体からズボンを引き抜くと、土方の欲望は緩やかに天を向いていた。
「酒を飲むと勃たなくなるっていうけど、土方クンには関係ないみたいだね」
「ぁ、あ…っ…」
 銀時の手に握られ、嬉し涙を零す勃立を扱き上げる。くちゅくちゅと響く淫らな水音をわざと大きく立てて、土方を追い詰める。
 伝い落ちる潤いで繋がる為の狭い場所の入り口を濡らすと、そこは恥ずかし気にヒクついた。
「あ〜あ、大洪水…ソファーに染みができたら困るから、全部ココで飲み込んでよ」
「やっ…!」
 勃立から離し、差し入れた指を繊細な媚肉が締め付ける。火傷しそうに熱いそこは、抜き差しならないくらいきつく窄まっていたが、促すように指を動かしてやるとゆっくりと綻んでいく。
 できた隙間にすかさず二本目の指を捻込んで小さな入り口を開くと、中は鮮やかなローズピンクが蟲めいていた。
「エロい色」
「なっ…ん、くっ…」
 ふっと息を吹き込めばそこは驚いたように収縮し、上がりかけた非難の声が途切れる。
 銀時は指を引き抜き、猛って脈打つモノを窄まりに押し当てた。
「―――ぁあっ…!」
 両手で土方の腰を掴んで引き寄せると、その体は弓形に仰け反る。蕾はまだ堅く、いきなりの侵入者に精一杯の抵抗を見せた。
「くっ…きっつ…」
 銀時はあまりのきつさに唇を噛んで呻いたが、押し出されそうになる欲望を、気合いと勢いでグイグイと突き込んでいく。
「ひぅっ…ぃ…ぁ…あ…」
 土方の腿が攣ったように震え、両手は銀時を突き放すように…それでいて縋るように伸ばされていたが、関係ない。
 勃立を根元まで埋め込んだ銀時はゆっくりと腰を回した。
「っ…く…ま、て…動くっ…な…!」
 目尻に涙を浮かばせ、土方が喘ぐ。
 だが、銀時は土方の腰を掴み直し、抽挿を加えて動きを激しいものへと変えていった。
 粘膜を守る為に滲み出した腸液が銀時に絡み、淫猥な水音を立てる。衝撃の強張りが解け、濡れた土方の裡は銀時を押し出そうとする締め付けではなく、絡みついて奥へ誘おうとする動きを見せる。
「っ…!」
 硬い切っ先でしこりを探り当てると、土方の蜜が溢れ出た。それを指で掬い取り、土方の唇に押し付ける。
「んんっ…」
「美味しい?」

 自分の吐き出したものが。

 自分の咥え込んだものが。

 土方は否定に首を振ろうとするが、銀時の指が邪魔をしていた。
 唾液と一緒に自分の白蜜を飲み込んだ土方の喉が大きく動く。
「たっぷり味わわせてやるよ」
 指で口腔を嬲りながら肉棒で体内を抉る。
 一時に二ヶ所を犯す感覚は、異様に興奮した。
「んぅ…う…」
「土方」
「ふっ…ぁ…」
 揺すり上げ、快楽に突き落とす。
 土方の勃立から零れる蜜が、二人の腹に擦り広げられて水音を響かせた。それに混じる土方の、すすり泣くような甘い声が耳に心地好い。
 息を吐く隙も与えない程に追い上げていくと、次第に土方の腕や脚が銀時の背中や腰に回され、動きを合わせるように白い肢体がくねり始める。


 ―――このまま、自分の色に染め上げてしまいたい。


 衝動に駈られるまま、銀時は土方を蹂躙した。
「ん、ぅ…ぁ…っ…ぎ…とき…!」
 切なげな声が自分を呼ぶ。
 土方のしなやかな身体を抱き、その奥を支配するのは、銀時しかいないから。こうして裡を突き上げている間は、土方が他の男の名前を呼ぶ事はない。
 一度懐に入れたものには非情になりきれず、大切にしてしまう恋人の“全て”になれるとは思わない。だから、意識を占めるのが“身内”でも、心を占めるのは“銀時”であって欲しいと、銀時は願う。せめて、一番大きな存在であって欲しい。
 健気な程の願いを口に出す事はないけれど、口付けに、体温に、情欲に乗せて、全身で土方に訴えているのだ。
「ぁっ…ぎん…っ、銀時…!」
「土方…」
 銀時は、一層強く土方を抱き締め、男とは思えない程細い腰を引き寄せると、一番深い場所に自分を注ぎ込んだ。
「ひぁっ、熱…ぃ…―――っ……!」
「くっ…ひじ…かた…っ…」
 灼熱に驚いた媚肉が戦慄き、銀時を締め付ける。





 今、お前を満たしているのはオレだよ……?


 わかる?


 感じてる?


 ―――貴方の中の、銀色の比率はどれくらいですか?―――


Fin.
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