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□銀魂(土方受)
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『勝負は引き際が大切』




「常日頃から、土方クンが照れ屋なのはわかってたけど。会った途端に刀振り回すの…止めない? 若さを過信してると、腰にくるよ?」
 真剣白刃取りで土方とせめぎ合いながら、銀時は苦笑を浮かべた。
 この膠着が長く続かない事は予想できた。何故なら土方の足に踏ん張りはきいていない。重心となる腰を庇う感がある。その原因を、知っているから。
 意味深に投げかけた言葉に、たちまち頬を染める恋人の暴挙にも甘んじる外ない。
「…どの口がそんな台詞吐きやがんだ、コラ…」
「この口?」
「っ…」
 素早くキスをかすめとって、力の抜けた隙に刀を奪うのも慣れたもの。
 甘く、熱い夜を過ごした翌日。巡回中に不意に出会すと土方は動揺する。
 周囲に気付かれないように必死に平静を装おうとする様子が可愛くて、愛しくて、ついわざと巡回のタイミングを見計らって姿を探してしまう、ひねくれた自分を銀時は自覚していた。
 刀を取り戻そうとする腕を掴み、引き寄せれば、土方の体は思い通りに飛び込んでくる。
「っ…テメェ…!」
 体全部をスッポリとはいかない。けれど、頭を胸元に抱え込むと、土方は銀時の腕の中で藻掻き暴れる。
 それを抑え込んで、銀時は耳朶に囁いた。
「土方ァ…今日は無理しないで、早く帰っておいで。銀さんの腕の中にね」
「っ…俺が帰るのは屯所内だ…!」
「またまた照れちゃって〜」
「ぶっ殺す」
 本気の怒りを感じた銀時は素早く距離を取って背を向けた。
「じゃあな、土方。待ってるぜ」
 後ろ手に振る指の間には土方愛用のマヨライター。
「なっ…返しやがれっ!スリの現行犯で逮捕してやるっ」
「捕まえられるものなら、喜んで捕まりましょうや」
 腰を庇う土方との距離を確実に開いていって、声も届かなくなったところで銀時は立ち止まった。
「子供たちはまた雌ゴリラのところにお泊まり決定だな」
 これで、土方は逢いに来る。銀時は口付けたライターを袂に放り込んだ。

Fin.
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