novel2
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「ところで鋼の。そろそろ昼食をとりたいと思うのだが、これは君判定では、サボリになるのかね。」
「試してみれば?」
「君は私に食事も与えないつもりなのか!」
「エルリック大佐。食事を与えないと軟禁から監禁に変わってしまいます。」
「そっか、それは想定外だった。」
「食事が想定外なのか!?それとも私の仕事量がかね!」
テンポよく交わされる会話ではあるが、マスタング中将、ホークアイ大尉、そしてエドワードはお互いの顔など見ることもなく、手元の書類を処理している。
時折アルフォンスが現れて、言葉短く処理済の書類と、中将の決済が必要でないものを指示を受けて運び出すだけで、皆の手は止まることはない。ある意味濃密な時間がそこにはあった。
「失礼します。大佐。」
そろそろ午後の来客の時間だと時計を確認したところで、ドアがノックされた。
現れたのはアルフォンスではあるが、先ほどまでとは様子が違う。
「不審火の件、動きがありました。大佐の読み通りです。ご指示を。」
そうか、とエドワードは応え、脱いでいた上着を肩にかけ、立ち上がった。
「大尉。」
兄弟二人の動向を見守っていたホークアイに、すばやく駆け寄ると、コソリと耳打ちする。
彼女は表情を変えることなくうなづく。
エドワードはマスタングのデスクの前に立ち、踵を揃えた。
「中将、片付けてきます。許可を。」
「大佐の君が現場に出る必要は?」
「ある。一刻を争うんだ。あんまごちゃごちゃ言ってっと、オッサンらの仲間入りかと思うぜ。
マスタング中将は加齢臭がするって、軍内に広めてやる。」
「君は一言いつも余分だな。許可しよう。そうまで言うからには、理由があるのだろう?」
サンキュ、と敬礼をしたかと思うと、金のテールは、ドアの向こうへと消えてしまった。
残されたのは静寂。
「私はあれを、もう少し出し惜しみしたいのだがね。」
中将の言葉に、珍しく副官が口元を綻ばせた。