small bro

□小さい兄さんと出会う
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 あまりに暑かったので、炭酸がきいた飲み物が欲しくなって、喫茶店に入った。ジンジャーエールを注文して、待つこと5分。ずいぶん早いが、氷入れて瓶から注ぐだけだろうから、こんなものなのかもしれない。早いのは、この際ありがたいし。
水滴のついたグラスから、ストローで金色の炭酸を吸い上げていく。

「はぁ…やっと涼しくなった………て、あれ?」 

そんなに夢中で飲んでたわけじゃないと思うが、グラスの氷に何か人形のような生き物がくっついていた。

「あれ?」

その小さい生き物は、小さい人間の姿で、じーっとこちらを見ていた。

「…生きてるのかな…?いや…」

こんな小さい人間なんて見たことない。

氷につかまったまま、こちらを見上げている大きな瞳は、ジンジャーエールのように金色で、髪も細かく生えているまつ毛も金色で、もしやこれはジンジャーエールの妖精さんかと思った。
ストローで、ちょいちょい突ついてみる。

「あっ…何すんだ!」

……喋れるのか。女の子かと思ったら、声は高めのテノールで、よく見たら小さな体の股間に、小さな突起物が付いていた。

「へえ…可愛いなぁ…」

たまに氷から滑って、アップアップしてるのも可愛らしい。
視覚で堪能しながら、ストローでジンジャーエールを吸い上げていく。
全部飲んだら、この生き物はどうなるのだろう?まさか、消えちゃったりしないよなと、少々不安になりながら、飲んでいく。ジンジャーエールも、氷が溶けて薄まったら美味しくないし。

 もちろん、妖精さんのその白い肌をいいように嬲りながら。ストローの先で乳首で遊んでやれば、ビクビクと感じて頬を染めた。
 やがてグラスの中には、恥ずかしそうに氷を抱える妖精さんだけが残っていた。

「開いたグラスお下げします」

「あっ!ダメ、ちょっと待って!」

喫茶店の従業員が、その生き物が入ったままのグラスを下げようとした。思わず大声を出して制してしまった僕は、変な客だと思われたかもしれない。
でも、僕の勢いに押されたのか、失礼しましたとグラスを置いていってくれた。
良かった。でも、この可愛い妖精さんはお持ち帰りしても良いのだろうか?もしかして、ここの備品とか…

「あの、すみません!これ…持って帰っても……」

グラスの内側を指差して、思い切って聞いてみた。
……どうやらこの妖精さんは、従業員には見えてないらしい。とすると、僕だけに見えてる?

「…氷、ですか?…どうぞ…」

 確実なのは、僕はきっともう変な客認定されているだろうということだ。
まあ、いいや。二度と来なければいいんだし。変な客だと思われているついでとばかりに、グラスの中からジンジャーエールみたいな金色の髪と金色の大きな目をした妖精さんを摘まみ出した。ハンカチに、そっとのせて大事に持って立ち上がる。
会計をする時も、従業員は僕とは目を合わせないようにしている。当然だ。僕だって、喫茶店の氷を大事そうにハンカチに包んで持っていくやつを見たら、迷わず目を反らす。
でもこれで、この可愛い生き物を自宅に連れて帰れる。


・・・・・


自宅の自室についてから、ハンカチを広げると、やっぱり可愛い妖精さんはちんまりと膝を抱えて座っていた。

「なんだよ…何ジロジロ見てんだよ」

「いや、可愛いなって思って」

「ねえ、名前があるなら教えてよ。僕はアルフォンス。アルって呼んで」

「オレは……」

「エドワード。エドでいい」

驚いたことに、僕の兄さんと同じ名前だった。

「エド、良かったらこれからここで暮らしてくれないかな?喫茶店のグラスの中よりは、快適な生活を約束するから」

「別に…考えてやってもいいけど…」

ぷいっと横を向いて言うツンデレ具合がまた可愛い。

「じゃあ、オレに毎日炭酸の入った飲み物を提供しろ。オレ、ソーダの妖精だから」

ソーダの妖精だったんだ。ジンジャーエールの妖精だと思ったんだけど、ちょっと違うようだ。

「じゃあ、コーラとかキリンレ●ンとかでも大丈夫なの?」

「うん。炭酸大好き」

コーラなら冷蔵庫にあったな…と、グラスに入れて持ってきた。

「馬鹿、氷入ってないと、溺れるだろ?」

……溺れるんだ。

「これからよろしくね、エド」

「…ああ」

素っ気ない返事だったけれど、ほんのちょっぴり頬を赤くしてるのを見逃さなかった。照れ隠しか、執拗に氷に額を擦り付けていた。



こうして、僕とエドとの不思議な生活が始まった。



・・・・・・

記念すべき、第1話目の小さい兄さん!
二人の出会いは、喫茶店でした。
これから、二人の生活が始まります。

あやは」香月珠さまの魔法でできています。

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