small bro
□小さい兄さんとケンカ
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ある日、エドとケンカした。
ケンカの原因は、ものすごく他愛もないことだった。ムキになった僕が悪いんだ。わかってる。
でも、頭が冷えた頃に反省してももう遅くて。
気がついたら、小っさいエドワードはいなくなっていた。冷えるどころか、頭の中が凍りついた。悔やんでも、それを伝えるすべがわからない。
僕は何てことをしてしまったんだろう…
エドワードがいなくなってからも、ついつい炭酸を買ってしまい、冷蔵庫は炭酸系の飲み物でいっぱいになった。
エドがいないソーダなんて、飲む気がしない。
いつ帰ってきても大丈夫なようにと、理由をつけて買っていた。
どうしようもない絶望感と悲しみに襲われたのは、エドの姿が見えなくなって3日目。
もう、会えないのかな…
一日一回ソーダに入らないとダメって言ってたくせに、帰ってこない。
もう、消えちゃったのかな…
悲しくて悲しくて、でも忘れられなくて、僕は自然に喫茶店へ足を向けていた。
そう、エドワードと初めて会ったあのお店。
もう二度と来ないだろうと思ってたのに、そんなことはすっかり脳内から飛んでいた。
あの時と同じように、ジンジャーエールを注文する。金色に泡が弾ける炭酸を見ていると、エドワードを思い出して涙が出そうになった。
「エド〜」
ジンジャーエール見ながら泣くなんて、変な客だと思われただろう。でも、そんなことにすら、気がまわらなくなっていた。
「帰ってきて…僕が悪かった…お願いだから…」
ジンジャーエールを覗き込みながら、涙が零れた。客観的にみれば、通報されてもおかしくないような変な客だ。でも、本当にそんなことを気にする余裕なんか無かった。
エドワードに会いたくて会いたくて、悲しくて仕方なかった。
ソーダが無くて苦しんでないかなとか、謝りたくて。それ以上に会いたくて
もう、他の誰かのとこ行っちゃったのかなとか。
考えれば考えるほど、涙が止まらなくなった。
エドに会いたい。エドに会いたい。エドに会いたい。
ジンジャーエールのグラスを抱えて、謝りながら号泣していた。
「ごめん、エド!ごめんなさい!」
カラン……
「もう……怒らない?」
ハッとしてグラスを見ると、ジンジャーエールに浮かぶちょっと溶けた氷の上に、会いたくて仕方がなかったエドワードがちょこんと座っていた。
「エ、ド……」
震える声で名前を呼ぶと、ぷいっと顔を背けられてしまった。
「もう…会えないかと…思って」
「オレが消えちゃってもいいのかよ?」
「だめっ!ごめんなさい!僕が悪かったから!帰ってきてください!僕のところに戻ってきて!」
テーブルに額を擦り付けて謝った。エドがいない、こんな苦しい時間はもう嫌だ。
「べつに!…帰りたいわけじゃ、ないんだからね!」
背けたままの顔が、ちょっと赤くなってるのは気のせい?
「うん…うん…僕がお願いしてるんだよ。帰ってきてください。お願い、エド」
「…仕方ねえなぁ!」
氷の上に立って、小さな手を伸ばしてくれた。
嬉しかった。嬉しくて、また泣きながら指をグラスに入れたら、エドワードは僕の指先にしっかり掴まってくれた。
「エド…」
ハンカチに降ろして、両手で大事に持って、「ごめんなさい」ってもう一度謝った。
そっと包んで、ポケットに入れて連れて帰ろうと席を立った。店員や他の客からの視線なんて、一切気にならなかった。
「帰ったら、今日はコーラな気分」
「わかったよ。ちゃんと買ってあるよ、エド」
ポケットに話しかけて、ほんの一時間前の気持ちがウソのように晴れていることに気がついた。ずっとずっと一緒にいたいって、見たこともないソーダの神様に祈っていた。
・・・・・
きゅんときちゃいますよね!!
私は、その上ウルルルっとなりました!
香月珠さまの素敵でできています!