novel3

□午後
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「兄さん、もうちょと前に寄って?」
「ん〜?」
「そうそう」
「わっ!」
「むふふ〜♪」

昼メシ食って腹いっぱい。差し込む暖かな陽射にリビングはポカポカ。ちょっと眠いかもなんて思いながら、お気に入りのソファで雑誌を読んでいたら、急に背もたれに両手をかけた弟から声をかけられた。
さっきまで昼の片付けをしていたはずだから、終わったことを伝えにきたのか?

雑誌と眠気でふわふわ現実離れをしていたオレは弟に言われるまま素直にソファに浅く腰掛けた。満足げなアルの吐息を背後に聞いて、そんなとこもちょっと色っぽいな、とかこっそり思っていたら、アルは長い足をするりと翻し、オレとソファの間にすべり込んできた。

「なんだこの状態は」
「気にせず読書どうぞ」
背後から両腕をオレの腰に回し、顎を肩口に乗っけて頬を寄せている。
まるまる抱き込まれちゃったよオレ。

「気にするなっちゅうのが無理だろ。」
「じゃあ…」

途端男の色を含んだ声色でアルが囁く。
「いっそ僕を感じて」
雑誌は取り上げられて床へ。雑誌とはいえ、本をそんな扱いするなんて、兄ちゃんはお前をそんな子に育てた覚えが、なんて言っていたら、腰に巻き付いていた腕がほどけ、衣服の隙間から…

アルの唇がうなじに、

舌が、

指が、


またしてもオレの休日は、人には言えないものに変わってしまった訳だ。

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