05/31の日記

10:30
日常65(小話)
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兄の全ては、マスタングにつながる。立ち上がる力を得たのも、前に進む力を得たのも、エドワードの苦しみも、喜びも…秘密も、全ては彼に、そう、感じずにはいられない。
程なくして本人に繋がった電話に、レナム医師がアルフォンスの名前を出した。相手の声が聞こえる訳ではないが、息を詰める。
アルフォンスは兄を取り戻す為に形振り構わず、マスタングの自宅へ押しかけた経緯がある。最も不躾な方法をとり、どうあれ世話になった兄を挨拶もなく奪い返したのだから、よくは思われていなくて当然だ。エドワードに対し、ひとかたならぬ想いを抱いていただろうから、なおさら名前すら耳にしたくないだろう。

マスタングがアルフォンスとの面会を断れば、ノーだ。彼は何も知らない。いや、知っていても伝えなくてもよい情報、エドワードのこの失踪が、彼の抱える秘密が、アルフォンスを起因としなければ、マスタングは面会など望まないはずだ。
会うという答えは、つまり、エドワードの身に起こっていることが、見過ごせない、かつ緊急を要することを意味する。

「…では、そう伝えます。」

レナムは丁寧に礼をいい、電話を静かに受話器を置いた。
そして、一息ついてから、アルフォンスに向き合う。

「マスタング少将は、お会いなるそうですよ。明日の22時に少将のご自宅へきて欲しい。遅くなってすまないが、ということです。」

アルフォンスは、目の前が彩度を失い、覚悟の足りなさを悔いたのだった。

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