06/05の日記

01:20
日常66(小話)
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何か他に見落とした手掛かりが無いかと家を捜索し、まんじりともせず次の日を迎えたアルフォンスは、マスタングの指定した時間に到着するよう家を出た。それでも逸る気持ちを抑えられず歩みが早くなったのか、彼の家が見えた頃には約束よりも少し早い時間であり、街灯で時計の針を確認して、ため息をついた。
国軍の将軍の家の周りでうろつく訳にも行かない。どうしたものかと、思案し佇んだところで、その彼の家に横付けされる車があるのが見えた。程なく家に灯りがつく。
思わず掛け出たところで、その車を運転していたであろうハボックがアルフォンスに気づいて手を挙げた。
「おー、久しぶりじゃねえか。」
「お久しぶりです。ご無沙汰してしまってすみません。」
挨拶を交わしていると、ハボックの背後の扉が開いた。
「…来ていたか。こんな時間に呼びたててすまなかった。」
軍服の上着を脱いだだけの姿のマスタングが現れて、アルフォンスも強張る顔を、そうならぬよう努めながら、挨拶と、忙しい中、時間を割いてくれたことに礼を述べ素直に頭を下げた。
「アルフォンス、君は食事を済ませているかね。」
そう問われて、思えば、朝にミネラルウォーターで口を湿らせた程度であったと気づいた。だが、空腹など感じていなかったし、何よりも気が急いでいたから、一食や二食どうでもよかった。
マスタングとアルフォンスの間に生まれた微妙な歪をハボックに気取られるような会話をすることは、事の起こりを知らない彼の前では避けたいことだったが、兄のことを聞きたい。少しももう時間を無駄にしたくない。
「私はまだなんだよ。特に今日は忙しくて昼も軽く済ませただけなんだ。その様子だと、君も大差ないようだし。この近くに、酒場だが、しっかりした食事も出す店がある。付き合いたまえ。」
ハボックにも同じように声をかけるマスタングに、アルフォンスは身を乗り出した。
「しかし!」
ちらりと寄越された視線の、有無を言わさないそれに、続く言葉がなかった。
背筋を汗が伝う。

燃えるようなだが、冷たい焔。

焔の錬金術師、その人の。

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