07/11の日記

10:09
日常71(小話)
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兄へと伸ばした手が届かなかった記憶は、その後途切れて、次の瞬間には眼前にあったのは、血溜まりで震えるエドワードの姿であった。
どういう経緯で当たり前の肉体を失い鎧となったかなどと考える間も無く、出血性ショックで痙攣するエドワードを抱きかかえ、ロックベルの家へと走った。

「身体の全てを失い、誰の目にも見えぬ魂という存在がそこにあると言ったところで、それは果たして生なのか。」

それは、マスタングに言われなくとも、飽きる程にこれまで自問自答してきた。
自分の意思で動くとはいえ鎧の手足は、筋肉の躍動も伝えず、痛覚どころか触覚もない手足に、感覚を突き詰めれば、気が狂いそうであった。
自分は何者なのか。

「だから、あれは、…エドワードは、扉の前の弟の肉体を、自分の身体の一部に関連づけ、死と「判別」されて扉の向こうに奪われぬよう、真理から隠したんだそうだ。魂の混線は副産物に過ぎない。」

標準より小さな身体は、機械鎧のせいだけではなく、扉の前の弟の身体を生かすためであった。
魂の混線の可能性を聞かされた時にも、兄からはこの件について意図的に語られることはなかった。

「君は、その身体を取り戻した方法は、正しく知っているのか?」

正しく、という言葉に、胸が鈍く痛んだ。

「…いえ、何も知りません。」

その頃のアルフォンスは、鎧と魂の定着が不安定となり、意識が途切れ、旅もままならない状態となっていた。エドワードは、十分な時間や準備などもできないまま、一人で錬成に挑んだのだ。

「君の身体を取り戻すのに、あれは、賢者の石を使用したのだが、それも知りはしないのだな。」

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