海×クレフ1

□a pillar
1ページ/5ページ

セフィーロ時間での真夜中。
城の中枢でクレフが一人、雷の轟音を聞き、光を見ていた。
柱≠ェいないだけで、こんなにも混沌とした世界になってしまうのかと嘆く。
目を閉じればいつだって、エメロード姫が祈っていた世界が蘇るというのに……


『a pillar』


青い海や空、生い茂る森、精獣の鳴き声、空に浮かんだ火山……
そのどれもが、エメロード姫の心を象徴するかのように美しかった。
しかし、目に映ったものが美しくても、それは……

「本当に美しいのか…?」

何代もの柱≠導いてきた彼にとって、

柱≠フ心で支えているこの国は本当に美しいのか?
ただの柱≠ニいう名の生贄≠ナはないのか?

としか思えなくなってきた。
エメロード姫の先代の柱は寿命で亡くなり、何人かの柱候補からエメロードが選ばれた。
自らの教え子である彼女が柱に選ばれた時、エメロードの周りの者は彼女をこぞって祝福したが、クレフだけは違った。

柱に選ばれたことはこの世界の生贄を意味する

口には出さなかったが、祝福する気には到底なれなかった。
柱は生贄≠ノなる他、他の柱候補の犠牲≠も背負ってセフィーロを守らなければ
ならなかった。
それは、柱が決まれば他の柱候補が帰って来ないからである。
柱を選ぶ方法は極秘であったため、何故、柱候補だった者が戻って来ないのかも解らなかった。
柱候補者は、自分が柱になれなければ死を意味することを理解しなければならない。

当然その犠牲の中には、クレフの教え子も存在した…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ